今週の振り返りと来週の株式相場の見通しレポート(2023年2月18日)

株式・金融

Weekly 2月20日

経済指標の発表で米金利ジワリ上昇

16日は久し振りにTOPIX終値が2000ポイント大台に乗せたが、「2000ポイントの壁」は岸田内閣以降続いている。統計上は個人投資家の売り越しが観測されているが、先行き不透明感が強く、中長期投資家の不在が大きな要因と見られている。いわゆる「将来期待」がカギを握る。底流にその流れができるか注目される。

ただ、短期的には、待機していた格好の売り方再動に翻弄される可能性は高い。米市場で「3月FOMCで利上げ幅が0.5%になる可能性」に賭けるオプションポジションが構築され始めたと伝えられる。

なお、1月第3週から2月第2週累計の海外投資家の株式先物買い越しが2兆862億円となり、ドル円も134円台に円安進行してきたことで、12月のYCC(イールドカーブコントロール)修正波乱相場(国債売り、日本株先物売り、円買い)は終息したと言える。どちらにも振れやすい地合いと考えられる。

 15日発表の米経済統計は市場予想を上回り、リセッション(景気後退)懸念が一段と後退した。注目度が高かった1月小売売上高は前月比+3.0%(市場予想+1.8%、前年同月比は+6.4%、インフレ分をやや上回る数値)。自動車・部品+5.9%、飲食店+7.2%などが牽引。  

1月鉱工業生産指数は製造業生産指数が前月比+1.0%(市場予想+0.8%)、3ヵ月ぶり上昇転換の自動車生産+0.5%が目立った(販売増につながった公算がある)。

NY連銀発表の2月NY州製造業業況指数は-5.8。3ヵ月連続マイナスだが、市場予想の-18.0,1月-32.9を大きく上回った。6ヵ月先は+14.7。全米住宅建設業者協会(NAHB)の2月指数は前月比7ポイント上昇の42(市場予想37)、昨年の低迷から脱しつつあり、センチメント改善と伝えられた。

つれて、ジワリ金利上昇(10年債3.80%台、2年債4.63%台)、ドル高(6週間ぶりのドル高円安水準)。日経平均は19営業日連続の2万7000円台の膠着相場だが、日経平均ボラティリティーインデックスは15日に15.14(17日は15.40),20年1月以来の低水準。この日東証のストップ高銘柄数は17に増え、火を付ければ燃えそうな雰囲気はある。次から次に出て来るミニ懸念を織り込みながら、景況感持ち直しがカギになると思われる。

 16日発表の米生産者物価指数(PPI)や新規失業保険申請件数が良好な結果でドル買い・米金利上昇となっている。ただ、米雇用統計から強い数字が続いたこともあり、いったんは利益確定の動きも出たようだ。今週は24日に次期日本銀行総裁の所信聴取などを控えており、それまで円は大きく動くことはなさそうだ。

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日銀新人事とキャリートレードの継続は?

紆余曲折、日銀人事は予定通り10日に内定した。第一印象は、市場変動リスクの高い14日の米消費者物価指数(CPI)発表と重ならなくて良かった。雨宮氏の固辞が原因か、気球一発で急変したのか分からないが、学者副総裁枠の植田氏が横滑り総裁の印象。やや高齢なので、副総裁は若返り人事と言ったところか。

今後の発言動向で振れる可能性があるが、キーワードは「キャリートレードの継続」と見る。ちなみに、キャリートレードとは、金利が低い通貨を借り入れ、その資金を外貨に転換して運用する取引のこと。ヘッジファンドなど、借り入れた投資家の運用手法によって多種多様。黒田緩和は国内政策で語られるが、黒田10年は、資金がGAFA(米IT 企業4社)などに流れ過ぎたキライもあり、コロナ禍での混乱もあったが、米国のファイナンスを支えたと考えられる。

米連邦債務は6月期限に上限問題があり、デフォルト危機(10日、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁)も懸念されている。インフレかディスインフレかの攻防も激しくなりそうだ。24年大統領選勝利を目指す米民主党にとって良好な景気軌道は必須条件。つれて、債券市場安定は外せないであろう。なお、10月―23年1月の米財政赤字は4600億ドル。歳入減、歳出増の環境にある。

もう一つの重要事項は中国。バイデン政権はブリンケン国務長官訪中を2月中にも行いたい意向のようだが、未確認飛行物体は4基目に広がっている。昨年11月29日に公表された米国防総省報告書によると、中国のISR衛星システムは21年末時点で260システム。全世界を監視している。気球はその一部で、致命的影響を受けるかは不透明。

それでもバイデン政権が中国を目指す究極の狙いは「資本自由化」と考えられる。中国は実質ゼロ成長か、マイナス成長と見られるが、大規模な金融緩和で凌いでいる。ある意味、1990年代の日本に似ている。米国がキャリートレード依存体制となったのは1990年代半ばの「強いドル」以降と見られる。チャイナ・マネーを(不正な狙いでなく)誘導することは、遠い目標と考えられる。

 13日、香港市場で二つのニュースがあった。一つは「本土顧客の口座開設禁止」もう一つは「香港の土地売却条件に国安法適用条件を追加(国家安全保障を理由に土地売買を制限できる)」。香港経済の統制強化に動き始めた可能性がある。

世界景気回復シナリオには中国経済の回復が織り込まれており、中国の政治経済の不透明感はネガティブ材料。中国株投資推進派には痛手となる可能性がある。翻って、米金融政策にも中国情勢が陰を落とす可能性が考えられる。

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台湾TSMC株売却と中国気球問題

さて、”投資の神様”ウォーレン・バフェット氏の投資会社バークシャー・ハザウェイの昨年第4四半期の売買動向が14日に報道され、15日のアジア株の重石となった。バフェット氏の運用動向は、全体相場と言うより、物色動向に影響する。なかでは、3ヵ月前に取得が明らかとなっていた台湾TSMC株(世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリ)である。世界で最も時価総額の高い半導体企業 の一つ)の保有を86.2%削減したことが明らかとなり、アジア市場に衝撃を与えた。15日の台湾加権指数1.42%下落、半導体悲観論と受け止めたか韓国株1.53%安、中国懸念と受け止めたか香港ハンセン指数1.43%安。日本株への影響は小幅だったが重石となった。保有はADS(米国預託株式)で米市場でのTSMCは5.3%安。

長期保有で知られるバフェット氏が何故TSMC株の保有を大幅に減らしたかは不明。米アップルを買い増しているので、ハイテク敬遠とも中国懸念とも言い切れない。ブルームバーグ算出による1月の中国本土・香港向け台湾ICチップ輸出は前年同月比27.1%減、09年1月以来の大幅な落ち込み。3月全人代に向けてのリスク回避とも受け止められる。

 その中国だが、情報は錯綜している。13日、中国外務省は「22年以降、米国の高高度気球が許可なく中国領空を10回以上飛来した」と発表した。米国の中国気球撃墜に対し、中国軍部が猛烈に反発、中国外務省は沈黙していると指摘されてきたが、強硬路線に足並みを揃えて来た。米NSC(国家安全保障会議)のカービー戦略広報調整官は強く否定し、トルドー加首相は「10~12日に米軍が撃墜した三つの飛行物体に関連性がある」との見方を示した。

中国政府が強硬路線に統一してきたのは、内情暴露が進むことへの危機感、3月全人代に向けての内部引き締め、米国との「交渉カード」を持つため、などの見方が交錯する。ブリンケン米国務長官の月内訪中は厳しくなり、17-19日開催のミュンヘン安全保障会議で外交トップ王毅氏との会談模索、3月インド開催のG20外相会議での秦剛外相との会談などで、対話路線を維持しようとしていると見られている。

10日、米政府は気球関与として、北京南江空天科技など6社・団体を輸出禁止対象とした。気球残骸回収で新たな部品などが判明し、範囲が広がるか注目される。米議会はもっと強硬姿勢だ。既に17本の反中国関連保安が準備されている。スパイ気球に対する対中非難決議は全会一致だった。7日開催の軍事委員会聴聞会のタイトルは「米国の国防に対する中国共産党からの今そこにある脅威」、財務委員会の聴聞会では「中国の経済的脅威との戦い」。

テキサス、フロリダ、アーカンソーなどの州で、中国人による不動産購入を禁止する法案検討が伝えられ、中国が「市場経済原則と国際貿易ルールに反する」と反発し、失笑を買ったとの報道もあった。インテルはベトナムへの投資を大幅に拡大する検討に入ったと伝えられた。気球問題から全面的な米中デカップリング加速に発展するか予断を許さなくなっている。

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