今週のマーケットの振り返りレポート(2023年5 月13日)

株式・金融

Weekly 5月15日

米CPIでも方向感決まらず

11日未明の千葉震度5強で起こされた方も多いと思うが、被害は軽微のようだ。その3時間前にトンガM7.6,5日の能登半島群発地震、3ヵ月前にはトルコ・シリア大地震と、関東大震災100年目を前に地震の多い年になりそうだ。地震は世界中何処で発生するか分からないので、底流の不安心理の一因になると見られる(個人的には米カリフォルニア州を懸念している)。

焦点だった米4月CPI(消費者物価指数)は前月比+0.4%、前年同月比+4.9%。食品とエネルギー除くコア指数は、前月比+0.4%、前年比+5.5%。前年比で3月を小幅下回り、市場予想と一致した。一応、5%割れを評価した格好で、金利先物市場での6月利上げ確率(FOMCは6月13-14日開催)は前日の25%程度から10%弱に低下したが、「方向感決まらず」との受け止め方。市場の利下げ転換時期見通しは9月。

代わって連邦債務上限問題の緊迫が続いている。元々、100年前の法律で過去80回ほど政争の具になってきた。政府機関の一時閉鎖はあっても、デフォルトは無かったので、基調は楽観的だが、万が一リスク懸念が出ている。10日、はJPモルガンのダイモンCEOがロイターのインタビューに答えて「金融パニックを引き起こす可能性がある」、「08-09年の金融危機再来は本当に避けたい」と発言。ヘッジファンド運営のワドワニ氏が「(史上初の米国債格下げにつながった)2011年の上限問題時よりデフォルトリスクが高い」、「議会に行動を起こすには11年と同等かそれ以上の市場の衝撃が必要だ」との見解を示した。債券市場は「米金融当局が200~300bp(2~3%)の利下げで対応しなければならなくなる何らかの事件が20-30%の確率で起こることを織り込んでいる」との見方。

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連邦債務上限問題進展せず、混迷感増す

注目のバイデン大統領-マッカーシー下院議長等の連邦債務上限問題を巡る協議は”平行線”に終わった。ただ、実務者による協議、12日の指導部再協議で合意したが、これも延期。今週早々再開される見通しだ。6月1日にも危機に陥ると、イエレン財務長官が強く警告しており、予断を許さない状況が続いている。

バイデン大統領の支持率は7日発表のABCニュースとワシントン・ポスト紙の調査で36%と過去最低、不支持率56%。9日発表のロイター/イプソス調査で支持率40%、バイデン政権の移民政策支持は26%、連邦債務上限引き上げに54%が反対した。

11日にコロナ対策での移民入国制限が解除されたため、大量の不法移民が流入するとの懸念が急速に高まっている。パナマなどに不法入国を狙う中国人などが大量に待機していると伝えられる。9日、バイデン大統領はメキシコ大統領と電話協議し、移民問題・麻薬や武器の密売、貧困対策などを協議した。トランプの「国境の壁」を廃したツケが一気に噴出する恐れがある。

米株式市場は10日の米CPI発表後も金融政策の方向感も不透明になっている。ウィリアムズNY連銀総裁は「信用状況の悪化の影響が未だ把握できず政策の行方見極め困難」と述べた。インフレ動向だけでなく、連邦債務上限問題、不法移民問題なども念頭にあると見られる。ギャラップ調査でパウエルFRB議長への国民の信頼度は36%と過去最低(今までは就任直後のイエレン氏の37%)を更新した。同調査でバイデン大統領の経済リーダーシップに対する信頼度も35%、就任直後の21年は57%でコロナ対策の大盤振る舞いは歓迎されたが、インフレ対策は失敗との見方が強まっている。

混迷に我慢できなかったか、S&Pグローバル・マーケットは米国の今来年経済見通しを引き下げた。今年は0.2ポイントダウンの1.2%、来年は0.9ポイントダウンの0.9%。株価は年央に下落。懸念の中心は商業用不動産ローンの劣化による非住宅建設投資の下振れのようだ。

波乱リスクは空売りを誘うので、t買い戻しを伴い一本調子の下落展開にはならないと思われるが、乱高下の要素がある高値揉み合い相場と想定される。

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米地銀株乱高下、連邦債務上限問題などにシフト

先週の米株相場は総じて冴えなかった。週初の焦点の一つは地銀株の動向だった。4日に掛けて暴落していたが、5日に急反発した。戻った要因はハッキリしないが、嵩に掛かって攻めていた売り方が慌てて買い戻しに動いた印象。4日から5日にかけ、「規制当局に介入求める声強まる」、「米当局、銀行株の”市場操作”の可能性注視」などロイターが報じている。

SEC(米証券取引委員会)は「大手ヘッジファンド巨額損失、72時間以内に報告義務」の新規制を導入する。対象は運用資産15億ドル以上。急速に拡大するプライベートファンドも含まれ、これまでの四半期毎から飛躍的に危機対応を進める。地銀株とは直接関係ないが、空売り規制やファンド規制などが連想された可能性がある。

地銀危機は、資産運用会社が地銀優先株を売り始めたことから始まった様だ。米銀が資本増強に向けて発行した証券の積極的な買い手が売りに転換したことで、資金調達懸念が一気に高まったと見られる。クレディ・スイスでもそうだったが、劣後証券の高利回り魅力が剝げ落ち、高リスク商品になったと考えられる。シリコンバレー銀行破綻後、時価総額100億ドル未満の銀行の上場優先株は平均で20%下落、大手行の優先株が0.5%上昇したのと明暗を分けたと伝えられる。

問題は地銀が何行破綻するかでなく、地銀の積極的融資先の縮小、混乱が広がるかどうかに移ると見られる。大雑把に、新興企業投資、商業用不動産、SDG関連が挙げられる(蛇足だが、BLM(人種差別講義運動、Black Lives Matter)など極左系団体も資金源を失っていると見られる)。5月1日にビバリーヒルズで開催された会合に参加したシティグループのCEOがオフィスオーナーに強めの警告を発した。ブラックストーンは、もう6ヵ月も一部のREITの解約制限を行っている。JPモルガンが買収したファースト・リパブリックの破綻のタネはジャンボモーゲージで播かれていたとブルームバーグが伝えた(全体の損失はFDICとJPモルガンが分担する)。

不動産市場には高金利の圧迫が掛かっており、経済破綻などの危機論のカギと見られる。早ければ「7月利下げ」説も、(耐えられないとの見方で)この辺りから生じているものと見られる。

FOMC、ECB、さらにノルウェー中銀も予定通りの0.25%利上げ。まだインフレ水準が高いことが背景だが、原油相場は下落しており、今のところインフレ再燃リスクは小さい。 代わって、前述したように6月1日にも資金難に陥る恐れがあると警告されている米連邦債務上限問題が重要性を増す公算大。

中国統制強化が活力殺ぐ方向

ある意味驚くべきニュースが出た。11日、中国政府系証券時報は「規制当局が”敏感”情報の拡散防止を証券会社に指示」したと伝えた。証券会社アナリストに対し、専門家から得た機関・業界情報が合法的でコンプライアンスに則っているかどうか、慎重に検証すよう要求。証券会社は敏感分野のレポート情報源チェック強化を求められたと言う。「敏感情報」が何なのか分からないが、このところコンサル会社や資産査定会社へのスパイ取締り活動を繰り返し行っており、専門家と投資家を結びつける業界最大手キャップビジョンの事務所も捜索を受けた。当局は同社が国家機密を漏らし、外国情報機関と繋がっていると非難している。2000社を超えるヘッジファンドなどの顧客に動揺が広がっていると言う。

10日付ロイターは「米大手企業、中国事業に慎重姿勢、ゼロコロナ解除後の回復鈍く」と報じた。ペプシ、コカ・コーラ、クアルコム、トラックエンジン大手のカミンズなど。化粧品大手エスティローダは業績見通しを下方修正し株価が急落した。アップルの第2四半期(1-3月)の中国売上高は2.9%減少(世界のアイフォーン出荷台数は+1.5%。スマホ全体の世界集荷台数は13%減で、中国不況の代表的存在となっている)。「下期の回復を期待するが、改善の兆候は見えていない」とする企業が大半と言う。

11日発表の中国4月物価統計は、CPI(消費者物価指数)が前年同月比+0.1%(市場予想+0.4%、前月+0.7%)、約2年ぶりの低水準。PPI(生産者物価指数)は同-3.6%(市場予想-3.2%、前月-2.5%)、7か月連続の下落。これを受け、10年物国債利回りはフシ目とされる2.7%を割り込んだ。利下げ観測や大手国有銀行の預金金利上限引き下げなどを投影した動き。4月PMI(製造業購買担当者指数)の低下、輸出減速、輸入落ち込みなど景気回復が失速しているとの見方があるなか、物価低迷は拍車を掛ける材料。

中国PPIは商品相場に影響を与えることで知られるが、先週、米国発エネルギー関連の大きめのニュースが二つ出た。一つは「マイクロソフト、核融合電力購入で世界初の契約、28年から供給」(核融合発電開発のヘリオン・エナジー)。もう一つは「ハネウェル、グリーン水素と回収CO2で低炭素航空燃料を製造する新技術開発」(SAF:持続可能航空燃料はバイオマスや廃食用油から作っている)。これに中国の購買力低迷の見方が加わると、エネルギー価格抑制、インフレ減速の見方が強まる可能性がある。

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