今週のマーケットの振り返りレポート(2023年4 月22日)

株式・金融

Weekly 4月24日

今年後半の輪郭、G7サミットに向け、対ロ、対中政策が議論

20日のウォール街を冷え込ませた(NYダウ110ドル安、先週小幅安で終わった中での最大の下げ幅)のは、ロイターが伝えた「UBS、クレディ・スイスのバンカーの大半を解雇へ=関係筋」かも知れない。報道によると「クレディ・スイスは近年、UBSが高リスクと判断した案件に手を染めており、企業文化や事業の進め方の面で衝突する可能性がある」ケレハーUBS会長は「クレディ・スイスの一部が悪い企業文化に染まっているのは明白だ」と述べており、何処で”整理の嵐”が吹くか、戦々恐々の面があるかも知れない。(筆者の経験からUBS も似たり寄ったりだと思うが)

5月19日からの広島サミットに向け、「(当局者は)対ロ輸出をほぼ全面的に禁止する案について協議している」と伝えられた。まだ、踏み込んだ議論ではない様だが、民間軍事会社ワグネルのテロ集団指定なども話題になりつつある(漏出した米機密文書では、中国がワグネルの武器提供を要請されたが応じなかったと記されている)。噂では、”8月休戦説”があり、ウクライナの反転攻勢説、ロシアの占領地確保思惑、米国のウクライナ支援息切れ説(来年の大統領選に向け)などが交錯する。

20日、ロシア中銀は第1四半期輸出が前年同期比35%減と発表。石油製品価格上限がある程度効果を出していると思われるが、困窮度を一段と高める方策が議論されているようだ。

重要演説を行うとの触れ込みだったイエレン財務長官の対中姿勢演説は「安全保障を強化するため、バイデン政権は経済コストを引き受ける用意がある」との声明だった。強硬・議会に比べればイエレン長官は親中姿勢と見られてきたが、「外国の競争相手を支配しようとする中国の行動に対抗していく」と述べた。

安全保障面などからの半導体規制に加え、ドル弱体化を狙う中国の姿勢、債務のワナの新興国債務問題を強く意識せざるを得ないものと考えられる。訪中意向も述べているので、夏場にも実現するかどうか注目される。なお、ブルームバーグによると「バイデン氏、対中投資制限の大統領令に署名かー5月G7前に」と報じられており、中国経済失速懸念やテスラのような対中投資企業に警戒感が広がった可能性がある。なお、記憶装置大手シーゲートはファーウェイ向け11億ドルHDD商談で、3億ドルの制裁金支払いを余儀なくされた。

もう一つ、JPモルガンが「米債務上限問題、来月にも深刻な問題になる」と予想。資金が払底するのは8月中旬だが、ストレスの兆しはXデーの2~3ヵ月前から始まるとし、短期債を大量保有するMMF( マネーマーケットファンド。格付が高い、短期の国債や地方債、社債などで運用されるため、比較的安全性が高い)がリスク回避に動く恐れがあると見ているようだ。銀行危機で急膨張したMMFがアダになる可能性がある。今年後半のイメージを探る動きが続こう。

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インフレ明暗

19日発表の英国3月CPIが前年同月比+10.1%と二ケタにとどまり衝撃を与えた。2月は+10.4%、市場予想は+9.8%への減速を見込んでいた。ピークは昨年11月の+11.1%、イングランド銀行の想定は+9.2%。食品・非アルコール飲料+19.1%、1977年以来の伸び率で、乳製品、砂糖、オリーブ油などが約40%上昇。食品とエネルギーを除くコアCPIは+6.2%、低下予想に反し横ばいだった。5月11日予定の英中銀金融政策決定会合での0.25%利上げはほぼ確実視されている。

英国のインフレは、輸入先の寒波・気候不順、電気代高騰から食品主導だったが、その余韻が残り、公務員・交通スト多発などが加わっていると見られている。ストは欧州大陸に広がっており、年金デモの仏に加え、21日にドイツ全土で鉄道ストが予定されている(賃金要求は当局の5%引き上げに対し12%と差がある)。英国立統計局が発表した22年12月~23年2月の賃金上昇率は前年比+5.9%。低下し難い構図となりつつある。英国の公務員ストに国民は冷ややかと伝えられるが、賃上げが進行しなければ消費需要への懸念が強まる。

カナダが18日発表した3月CPIは前年同月比+4.3%、前月の5.2%から減速、1年7か月ぶりの低い伸びとなった。コアCPIは+4.5%で、エネルギー価格下落の影響が出たが、「年央3%前後に低下」目標が達成できるか注目される。それでも19日から公務員15.5万人がストに突入した。税還付、パスポート、穀物輸出検査部門などが滞ると見られている。

エネルギー価格は当面安定した動きが見込まれている。OPECプラスの追加減産でWTI相場は70ドル/バレル前後から80ドル前後に水準訂正し、ドイツが原発を停止したが、景気動向のサインと言われるディーゼル油先物相場が下落(米国需要は2%減と見込まれ、中国の需要も落ちているとされる)していること、米国のシェールオイル・ガス生産が5月は過去最高見通しとなっていることなどが背景。まだ先だが、バイデン政権はアラスカからアジアへのLNG輸出事業を承認した。インフレ低下傾向を織り込む相場と見られるが、変節点が交錯しよう。

一方、米国のインフレは、ブルームバーグのエコノミストを対象にした調査では従来の想定よりも速いペースで低下すると見込まれていると報じている。複数の銀行破綻をきっかけとした与信環境のタイト化が寄与するとみられている。

 月間ベースの同調査によると、エコノミストらはCPI(消費者物価指数)とPCE(個人消費支出)価格指数について、2024年6月まで全四半期の予想を引き下げた。調査は4月14-19日に実施されている。

  シリコンバレー銀行(SVB)など複数の銀行が先月に経営破綻したことを背景に、消費者や企業からは融資を受けるのがかなり難しくなったとの声が聞かれる。こうした状況は利上げと同様の影響を及ぼしている。

 しかし、米金融当局がインフレ指標として重視するPCE価格指数は今年末時点で前年比3.8%上昇と予想されており、伸び率は当局目標のほぼ2倍に相当する。物価上昇圧力は過去数カ月に和らいできたが、当局者らが望むほどのペースでは緩和していないのも事実だ。

 ただ、融資基準の大幅引き上げが意味することは、借り入れコストが上昇し、企業景況感は弱く、住宅市場が急速に低迷しつつある環境において、経済のハードランディングが起こりそうだとの見方がますます強まると指摘するエコノミストもいる。今回の調査では、向こう12カ月におけるリセッション(景気後退)の確率は65%。これは2020年半ば以来の高水準ででもある。

中国GDP予想上回るもマインド盛り上がらず

いつも異様に早いと言われる中国GDPが18日発表された。第1四半期(1~3月)は前年同期比+4.5%、昨年第4四半期の+2.9%、市場予想+4.0%を上回った。ゼロコロナの混乱から脱したものの、世界経済減速が逆風から先行き安泰ではないと伝えられている。それでも、中国の23年GDP見通しをJPモルガンが6.4%、シティGが6.1%に、各々0.4%引き上げた(中国政府は+5%前後)。世界経済は今後5年間、3%程度の成長とするIMFは中国の寄与率がトップで、米国の倍程度に達する見通しとし、中国経済成長への期待は依然強い。

目立ったのは、20日中国財政省が1-3月歳入が前年同期比+0.5%とプラス転換したと発表した点。背景に不動産市場の好転で、土地売却収入減少が止まって来たことがあると見られる。ただ、集中的に資金を投入するなど諸対策の奏功と見られ、拡大ペースは限定的と見られる。米国統計によると、中国の米国債保有額は2月8488億ドル、1月から106億ドル減、減少は7ヵ月連続(1位の日本も減少しているが1兆820億ドル。日本を上回っていたのは昔話)。また、3月対ロ輸出は前年同月比136.4%増(1-2月+19.8%)、輸入40.5%増(同+31.3%)と輸出全体を押し上げた。品目は明らかにしておらず、軍事援助が疑われている。

米国株市場の反応は鈍い。欧州株をやや押し上げた程度。JPモルガンがIMF春季会合時に行った200人余の投資家調査によると「経済の回復が続いても投資家の頭に浮かぶのは米中関係や台湾問題」、「驚くほど落ち着いた物価状況が国内需要懸念を高めている」など評価の低さが目立った。ピュー・リサーチが12日に発表した3月後半米国民調査で、「中国を敵と見ている」38%(昨年比+13ポイント)、中心は「競争相手」、「パートナー」は6%に止まった。好感度合いでは「好ましくない」83%。「習氏が世界情勢で正しいことをすると信じている米国人はほとんどいない」としている。

13日、米資産運用会社ヴァンエック・アソシーツは投資信託チームを解散、中国市場から撤退した。完全撤退を進めているバンガードGに続く動き。中国情勢の混沌感は続くものと思われる。

 

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