【今月の特集記事】主要国で唯一、株高要因が揃う中国 ~23年の中国は景気回復と金融緩和が継続~中国株マーケット

株式・金融

欧米諸国はインフレ鎮静化のために利上げを継続し景気減速を引き起こすとみられる一方、中国は金融緩和を継続し、ウィズコロナに伴い景気回復が見込まれる。業績回復と金融緩和という株高要因を備えているのは主要国の中では中国のみで、今後も海外から投資資金が流入し株高を支えよう。

22年の中国のGDP成長率は+3.0%と、Bloomberg市場予想の+2.7%を上回ったものの、政府目標の+5.5%程度を大幅に下回った。新型コロナの感染に翻弄され、3月後半からは上海等を中心に都市封鎖となり、その後も断続的に各地で都市封鎖が続いた。11月末にゼロコロナ政策に反対する市民活動が活発化すると、政府はワクチン接種等の準備も無しにゼロコロナ政策を撤回。結果、都市を中心に感染が急拡大し、1月21日に中国疾病予防コントロールセンターは人口の約80%が既に新型コロナに感染したとの見方を発表した。

新型コロナの影響を受けやすい消費は、小売売上高が通年で前年比0.2%減、特に外食は同6.3%減と大幅に落ち込んだ。また、欧米では急速な利上げの影響で景気が減速し、中国からの輸出は1~3月の前年同期比15.5%増から10~12月には同6.5%減へ落ち込んだ。このような中、景気を支えたのは政府によるインフラ投資で、通年で11.4%増と二桁増となり、設備投資も減税等の効果もあり堅調に推移した。

なお、中国では穀物や燃料等の価格は国民生活への影響が大きく政府が規制するため、消費者物価指数は前年比+2.0%と低い伸びに留まった。

23年の成長率は+4.9%を見込む

図表1:中国のGDP成長率

23年の世界の景気は減速が予想され、IMFは23年の世界の成長率を+2.7%(22年+3.2%)と予想。このため、中国からの輸出は通年で前年比1.6%増(22年同7.1%増)に留まると見込まれる。

一方、中国内では春節休暇に人の大移動が起こり、2月には地方でも感染が拡大し集団免疫が全国的に達成されるとみられる。そうなれば3月頃からウィズコロナが一段と進もう。コロナ禍では消費者が消費を控え貯蓄を積み上げたが、ウィズコロナに伴いリベンジ消費が花開こう。日本の国内航空旅客数は、ウィズコロナが定着する前の22年前半にはコロナ前19年の6割程度だったが、後半には8割を超えてきた。中国の国内旅行も今年末までにコロナ前の8割程度まで回復し(22年12月は19年同月比40%)、他の消費も持ち直すと考える。また、政府は景気への影響が大きいとみられる不動産業に対する支援に注力し、住宅ローン金利の引き下げや不動産会社への融資拡大等を実施している。新築住宅販売床面積は年央あたりに前年同月比で増加へ転じよう(22年12月同31.5%減)。住宅販売が回復してくれば、家電や自動車の購入を刺激するとみられる。加えて、政府は昨年末の中央経済工作会議で23年は景気安定を最重視し、インフラ投資等の財政支援策も維持する方針を示した。政府は今年の成長目標を+5%以上に設定するとみられる。ウィズコロナの進展と政府による景気支援策等を受け、今年の成長率は政府目標に迫る+4.9%を見込む。

主要国で唯一、株高の条件が揃う中国

図表2:各国(地域)のGDP成長率と政策金利の見通し

企業業績の回復(=景気回復)と金融緩和は株価上昇の主要な要因である。ただ、23年にこの2つの要因を備える市場は主要国の中では中国だけのようだ。

米国では、商品市況の上昇やタイトな労働市場等を背景にインフレが高まり、FRBは22年3月から年末にかけて7回、計4.25%ptの利上げを行い、FFレートの誘導目標上限を4.50%とした。23年内にはあと3回、計0.75%ptの利上げを見込む。インフレの上昇率は既に鈍化を始めているが、未だ6.5%と高く、12月のFOMC議事録では「23年内の利下げはない」との方針が示された。また、急速な利上げの影響もあり、経済成長率は22年推計の+1.9%から+0.4%への減速を見込む。

欧州でも米国同様にインフレの高止まりと利上げによる景気減速が懸念される。特に欧州の場合、ロシアからのエネルギー供給に依存するため影響は更に大きいとみられる。

日本は欧米諸国の景気減速を受け輸出の伸びは鈍化するとみられるが、ウィズコロナに伴う国内旅行の活発化や訪日外国人の増加等が景気を支えよう。輸入物価の上昇等を背景に消費者物価の上昇圧力は高まっている。日銀は政策金利の引き上げは行っていないものの、イールドカーブ・コントロール下での10年物国債利回りの変動許容幅を引き上げた。これは「実質的な利上げ」と見られており、今後も10年物国債の変動許容幅を調整する可能性は高い。

一方、中国は前述のように23年は成長率が高まると予想され、政府は景気下支えのため金融緩和の継続を唱える。

このように、主要国の中で中国のみが株高要因を備えていることもあり、昨年11月以降、欧米から投資資金が中国に戻りつつある。ストックコネクト経由の香港から本土市場への海外投資家の買越額は1月3~20日のみで1,125億元と、22年通年の買越額900億元を上回った。

中国では目先、地方での感染拡大が見込まれるため、株式市場では利食い売りが出る可能性がある。ただ、足元の中国株のモメンタムは強く「押目待ちの押目なし」の状況が続く。また、中国景気の回復ピッチが速い場合、落ち着きつつあった国際商品市況を再び押し上げ、欧米のインフレを悪化させることも考えられる。結果、欧米の金利上昇が更に長引き、投資資金が更に中国に入る可能性もあろう。

(投資情報部 白岩 CFA)

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