今週のマーケットの振り返りレポート(2023年3月11日)

株式・金融

Weekly 3月13日

雇用統計前に米金融株急落

9日の米株市場で、米金融持ち株会社SVBファイナンシャル・グループの株価が一時63%の暴落症状となった。傘下にシリコンバレー銀行を持ち、ベンチャーキャピタル(VC)を通じて新興企業融資を行っている。VC支援を受けるテクノロジーおよびヘルスケア新興企業のほぼ半分と取引しているとされる。資金繰りの悪化で、8日夜に17.5億ドルの株式売却、22.5億ドルの株式発行を発表した。「米国債やMBS(住宅ローン担保証券)を含むポートフォリオで大きな損失を被ったため」と報じられている。

SVBのCEOはシリコンバレー銀行の顧客に「落ち着く」よう要請したが、著名ベンチャーキャピタルファンドは資金引き揚げを提言。キャッシュバーン(現金燃焼)と呼ばれる預金引き出しが起こっているようだ。この日、仮想通貨関連企業と取引する銀行持ち株会社シルバーゲート・キャピタルの自主精算決定と重なり、銀行株が急落。S&P地銀ETFは7%超、S&P金融は4.1%安。20年6月以来の大幅下げ。

そして、翌10日、この日は雇用統計が発表されることになっていた。しかし、同日FDIC(米連邦預金保険公社)は、米カリフォルニア州の規制当局が米金融持ち株会社SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレー銀行を閉鎖したと発表。FDICの10日発表によると、SVBの昨年末時点の総資産は約2090億ドル(約28兆2000億円)で、預金規模は約1754億ドル。

9、10日の米市場はSVBの破綻がもたらした金融不安で大きく下げ、先週1週間でNYダウは4.44%、1481ドルの下げを記録した。FDICが破綻管財人となることで、この特定の銀行を巡る不確実性には終止符が打たれると思われるが、必ずしも人々の不安を防ぐことにはならないだろう。似たようなリスクを持つ地銀に預金している場合や、関係資産に何らかのリスクがある場合にはそうだ。銀行の取り付け騒ぎは心理面からの影響が大きい。現時点で、株価が神経質になるのは無理もない。10日の世界の株式市場は米地銀の問題が原因で銀行株は大幅安、各国の株価指数を大きく押し下げている。

雇用統計で0.50%の利上げが不透明に

9日発表の週間新規失業保険申請件数(3/4現在)が予想外の2.1万件増の21.1万件(市場予想19.5万件)と、5か月ぶりの大幅増となった。とりわけ、NY州+1万6363件、加州+1万489件で急増した(数値は調整前)。IT関連や金融業界でのリストラ急増が裏付けられた格好。  

10日発表の雇用統計には含まれないが、再就職支援会社チャレンジャーが発表した企業の1-2月雇用削減数は18万人超、2009年以降で最多。強い強いと言われて来た米雇用環境に翳りが差して来た。

4%攻防だった米10年債利回りは一時3.90%台、5%攻防の2年債は一時4.87%台に急低下。ターミナルレート6%乗せの合唱が起こっていたが、一気に不透明になったと言える。来週の利上げ幅も不透明になった。

米地銀の健全性に関して既に不安が広がっていた10日のウォール街では、2月の米雇用統計が強弱入り交じる内容となったことで、FOMC(米連邦公開市場委員会)が3月の会合で50ベーシスポイント(0.5%)の利上げを強いられるとの警戒は和らいだ。2月の就業者増加数は31.1万人増。市場予想の20万人強を大きく上回ったが、失業率は1月の3.4%から3.6%に上昇した。賃金の伸びは前月比0.2%上昇と予想(0.3%上昇)を下回った。この統計は、過去1年の記録的な利上げの影響を精査するために利上げを休止することもせず、政策金利をあまりに過度に引き上げることでさらなる重大な政策の過ちを犯す過程にあるという見方も出てきている。今回の地銀問題も当局の判断ミスかもしれない。

米株市場は年初から2610億ドル(約35.5兆円)の自社株買いなどに支えられてきたが、良く見ると、2/3以上は5社(シェブロン、メタ、GS、ブッキングHD、セールスフォース)が占め、全体の歯止めになりにくい構図でもあった。過去10年間の米株牽引の原動力と言われた自社株買いにも限定観が強まっている。ただ、エンジン増産などのGE株は5%高。ファンダメンタルズを見極める方向に流れるものと考えられる。

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カナダは利上げ停止。利上げ懸念は一方的に高まらない公算

8日、カナダ中銀は金融政策会合で「政策金利を4.5%に据え置く」ことを決定した。9会合ぶりの据え置き(今までの8会合で合計4.25%利上げ)で、主要中央銀行では初めて。年央にはインフレ率は3%近辺に低下するとの見通しに沿った展開とした。23年1~3四半期はゼロ成長予想で、サプライズがなければ、年内の金利は据え置かれる見通し。

9日、バイデン米大統領は予算教書を発表した。予算教書では、「向こう10年間の財政赤字削減目標を従来の2兆ドルから3兆ドル近くに引き上げる」とした。金利大幅上昇に伴う赤字拡大、国債増発リスクを抑制する意味合いがある。

半導体業界の見通しが混沌としている。7日、米エヌビディアとAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)が中国インスパー(浪潮集団)子会社への製品供給を停止するかどうか、奔走中と伝えられた。インスパーはクラウドのデータセンター向けサーバーで世界3位。米輸出禁止対象に入れられたが、子会社は入っていない。軍事安全保障問題が背景だけに、おそらく禁止される方向と見られる。同様に、ドイツがファーウェイ、ZTE製機器の5Gシステムへの使用禁止検討と報じられた。8日はオランダ政府が先端半導体技術の新たな輸出規制を計画と伝えられた。中国半導体業界への締め付けが一段と広がってきている。中国除外は数量的な回復を遅らせることになると見られる。

日本株の強さが話題となっている。PBR1倍割れ銘柄が話題になっているが、ワンテンポ遅れて昨年12月20日のYCC修正で組まれた「国債売り、円買い、日経平均先物売り」ポジションが解消されているためと見られる。黒田総裁最後の金融政策決定会合で、黒田総裁の最後のサプライズを期待する向きも居ない訳ではないが、政策維持、新正副総裁承認、メジャーSQ通過などで一旦一区切りつく可能性が考えられる。海外情勢から見ると、強弱綱引き構図が考えられる。

パウエル議長議会証言時点では利上げ警戒再燃

7日は「3」の厄日の様だった。「H3」ロケット失敗で「だいち3号」は海の藻屑となり、三浦瑠璃氏夫が逮捕され、三浦半島沖で遊漁船とクジラが衝突した様で、酪酸菌整腸剤「ミヤリサン」一部生産中止観測も流れた。H2ロケット8号機が小笠原沖400kmに墜落した時は、海底3000mから機体を引き揚げ、原因究明を行ったが、今回はフィリピン東方沖、もっと深い様で、回収困難との見解。H3ロケットは新年度に3回打ち上げ計画があるが、

通常、二段目ロケットの失敗はなく、今後の展開は「原因解明」がカギと見られる。日本経済に弾みを付けられず誠に残念。

米市場では、パウエルFRB議長が上院銀行委員会での議会証言で「利上げ加速、ピーク金利上昇を示唆する」発言を行ったことで、一気に調整ムードが広がった。元々、2月雇用統計、今週14日の消費者物価指数、21-22日のFOMCを控え、買い戻し相場に一巡感があったところで警戒ムードが広がった格好。議長は解決メドが立っていない「連邦債務上限問題」にも言及したことで、警戒ムードに拍車を掛けた可能性がある。

7日のパウエルFRB議長議会証言で、市場の利上げ目線が一気に高まったが、8日の下院金融サービス委員会での議会証言では、利上げペース加速や最終金利水準が引き上げられる可能性に言及しつつも、3月会合について「まだ何も決定していない。今後入手される指標次第」と強調した。8日発表のベージュブック(地区連銀報告)では「23年初の経済活動はわずかに増加。多くの地区でインフレ圧力は緩和」とした。労働環境は「引き続き、いわゆる熟練労働者を見つけるのは難しい(単なる数的逼迫感ではない)」とした。米2年債利回りは5.07%台に上昇、長期債は軟化したので、2-10年債利回り格差はー109bpに一段と拡大した。

短期金利先物市場での3月利上げ0.50%確率は66%に撥ね上がった(前日約30%)。FF金利は5.0-5.25%に引き上げられることになり、この後、5,6月も利上げ継続観測で、9月に5.6%でピークを付けるとの見方になっている。米2年債利回りは5.014%と5%台に乗せ、反面、長期債はリセッション懸念から小幅低下、10年債は一時3.968%。2-10年債の利回り差は105bp程度、1981年以来の差に拡大した。

株式市場の弱気派は、最近の上昇もあって、「テクノロジー株中心に20%の下落余地がある」(弱気派の代表、モルスタのストらレジスト・ウィルソン氏)。6日には「短期的な上昇を見込む」としていたが、再修正したようだ。

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