Weekly 2月6日
FOMCは予想通りも雇用統計で金利高
焦点のFOMCは予想通りの0.25%利上げ、FF金利誘導目標(政策金利)は4.50-4.75%、決定は全会一致、「継続的な利上げが適切」との文言は維持された。反面、債券市場利回りは低下。10年債は一時3.387%後、3.41%台、2年債は一時4.098%後4.10%台。2年債が4%割れとなるかどうか注目されているが、現状は4%超。次回3月21-22日会合での0.25%利上げは確率84%に低下、5月2-3日会合での利上げ観測は大幅に後退。12月FOMCでの0.50%利下げが予想される状況。
この見方が正しいかどうかはインフレと景況感次第。パウエル議長はインフレ減速傾向を「喜ばしい」としながらも「一段の実質的な証拠が必要になる」と述べたが、「FRBが何処で利上げを停止するかは分からない」とも述べ、統計に一喜一憂する不安定な展開が続きそうだ。
1日のFOMC の後は3日の雇用統計に関心は移った。米労働省が発表した1月の雇用統計で、非農業部門雇用者数は51.7万人増加し、18.5万人の市場予想を大きく上回る伸びとなった。失業率は3.4%と53年半超ぶりの低水準。賃金の上昇率は一段と緩やかになったものの、労働市場の引き締まり継続を示唆し、FRB(米連邦準備理事会)のインフレ対応を複雑にする可能性がある。当然ながら前日のFOMCから株価はNYダウが0.38%安だったが、前日大幅上昇したナスダックは1.59%安。また10年債も売られ(金利上昇)、3.53%に上昇。
欧州利上げ、買い戻し加速
1日の米FOMC の後、バトンは欧州に渡ったが、欧州はもっと複雑だ。当局者が多いうえに、タカ派発言が先行する嫌いがある。結局、1日のFOMCの翌日に0.5利上げを発表した。欧州の新たな難題は、英国で12月から乱発されている公務員スト、仏で100万人以上の規模に膨らんできている反年金改革デモ(支給開始年齢62→64歳引き上げなどに反対する運動)など、世情が不安定化している。
暖冬に救われた面があるが、電力料金高騰が激しいにも関わらず、抜本的対策(再エネ傾斜修正)を行っておらず、大衆の不満、先行き不安が膨らんでいる。ECB’(欧州中銀)はタカ派姿勢を示すだけで良いのか、こちらは買い戻し主導で上げて来た株価に不安定感が漂う。
ECB(欧州中銀)、英中銀とも市場予想通りの0.50%利上げ、追加利上げの必要性に言及した。ただ、米国から伝わった「近いうちに利上げサイクルが終了する」との見方から、買い戻し相場になった。政策金利はECBが3%、英中銀が4%と米国より低い。
2月1日に発表されたユーロ圏1月CPIは前年比+8.5%、12月の+9.2%から低下したものの、依然高い(ピークは10月+10.6%)。ただ、コア・インフレ率は7%で、1月統計はイレギュラーになる(ドイツが推計値、年初に値上げ集中)との見方で、利上げピーク感には大きな影響を与えなかった様だ。
ドイツのウクライナへの戦車提供で、プーチン露大統領の対独戦勝利記念日演説はドイツに対し強硬姿勢だった。ドイツ統計による22年の対ロ輸出は145億ユーロ、前年比45%減、輸入は370億ユーロ、同11%増。輸出は2003年以来の低水準だが、23年貿易は一段と縮小する見通し(非制裁対象は医薬品、農業機械など)。肩代わりとして狙うのは中国で、景況感、インフレ観とも中国情勢の影響が増すと見られる。ドイツ産業界の23年エネルギーコストは21年比約40%アップの見通しで、エネルギー各動向も焦点になる。
余談だが、若田部日銀副総裁がYCC(イールドカーブコントロール)維持論を主張、ようやく黒田総裁に援軍が現れた格好。
日米欧、利上げ巡る思惑軸に駆け引き強まるか
週初にドイツ国債の空売りが1111億ユーロ(1210億ドル)相当に膨らんでいることが明らかになった。2015年12月以来の水準で前にもあった様だが、独10年債利回りは買い戻しにより年初の2.569%から30日は2.24%(2年債2.592%、30年債2.116%)、3日には2.18%に低下しており、売り方してはECBにタカ派姿勢を示してもらいたいところだろう。上昇していた欧州株については、JPモルガンが27日付リポートで「ヘッジファンドの空売りの買い戻しが中心」と分析した。買い戻し中心は鉄鋼、航空、小売業。
米市場では「ヘッジファンド、米国債ショートが記録的規模」と伝えられた。「利上げは最終局面に近く、リセッション(景気後退)懸念が投資家を債券に回帰させる」との大勢に逆らうポジション。30日の米10年債利回りは一時3.553%、11日以来の高水準。売りポジションの解消は進んでいないと見られる。FOMCは金融緩和催促に抵抗を示すとの見方、逆に年内に1%利下げも有り得る(HSBCアセット)との見方などが交錯する。
忽然と「令和臨調」(令和国民会議)なるものが緊急提言を行った。ダボス会議で要請されたのか、アベノミクス終焉、政府・日銀の13年共同声明見直しを提言。具体的経済ビジョンを示す分けでもなく、国債流動性危機などを訴える主張は漠然とだが、日本の金融市場を欧米と合わせるとする主張に映る。黒田日銀がYCC(イールドカーブコントロール)で安定を維持してきたことが気にくわない外圧が存在するのであろう。主要メンバーに日銀副総裁候補の翁百合・日本総合研究所理事長がいるので、2月10日頃の日銀新人事のポイントの一つとなろう。
ブラックスワン・ファンドと言うのがあるそうだ。めったに起こらない地球危機に備えるファンドで、危機感を煽る立場。現在は「世界的な債務膨張(主にコロナ対策で)が大恐慌に匹敵する大損害を市場に与える」と警告している。金利を過度に低い水準にとどめていると中央銀行を批判してきた。いわゆる国際金融資本には、こういった主張が常に存在する。
この主張を念頭に令和臨調の主張を聞くと、”何処の回し者か”と言った印象を受ける。
各論ベースでは、ロシアがワグネルに代わって空挺軍主体の精鋭部隊を投入し攻勢を掛けていること、豪仏がウクライナ向け砲弾の共同製造を発表、独防衛大手ラインメタルが砲弾大増産の用意ありと表明。戦闘激化・長期化で砲弾需要が大幅に増える公算があり、インフレ市況ではエネルギーより金属市況にシフトする公算がある。
中国、春節明け動向注視
1月の香港ハンセン指数の月間騰落率は+10.4%、上海と深セン有力企業300社のCSI300指数は+7.4%。12月から海外投資家の勢いが止まらず、1月月間での買い越し額は1413億元(209.2億ドル)と過去最高、22年通年の流入額を上回った。
中国国家統計局発表の1月PMI(製造業購買担当者景気指数)は50.1,前月の47.0から急上昇し、昨年9月以降初めて分岐点50を上回った。非製造業PMIは54.4,前月は41.6、総合PMIは52.9,前月42.6。期待通りゼロコロナ政策転換効果が出たが、ここまで劇的か。
IMFが世界経済見通しを2.7→2.9%に引き上げ、中国は10月時点の+4.4%→+5.2%に大幅引き上げで中国期待は高まっているが、春節明け後の手応えを探ることになろう。IMFは不動産部門が引き続き中国経済の重石になるとしている。
米日蘭での先端半導体製造装置規制、米議会での「TikTokの米国内使用禁止」採決の動き、さらにバイデン政権によるファーウェイ(華為技術)への輸出許可停止(5G対応半導体は従来からだったが4G向けも禁止対象となった。スマホ生産などが壊滅的になる可能性がある)と、米国の対中規制は矢継ぎ早だ。直接関係しているか分からないが、香港上昇を牽引していた(指数の倍の上昇率)アリババ株が先週急落、警戒感が出始めているようだ。
日本企業への影響は、半導体製造装置のSCREEN社長の「精査できておらず不透明」が大勢観と見られる。業績上方修正のファナックは「春節明けの中国経済動向を注視。中国向けFA回復は今年度いっぱいかかる」、4‐12月期5割増益のコマツは「中国とCIS(旧ソ連邦)を除くと全て増収」と余裕。むしろ、中国生産回復→内需弱く輸出ドライブによるデフレ構造の影響を受ける業界(代表は製品市況低迷が続く化学業界)に警戒ムードが漂う。
なお、31日発表の台湾12月輸出受注は前年比23.2%減、うち中国は37.7%減。1月以降、
何処まで持ち直せるか。日本の対中輸出も同様の傾向になると考えられる。
中國共産党は3月5日から全人代を開催。ここで李克強首相はじめ、共青団派、改革開放派が一掃される。独裁体制を固めた習主席の側近政治に移行する。昨年、上海ロックダウンで名を挙げた李強前上海書記が新首相候補で、破綻した「一国二制度」に替わる台湾統治理論を王コ寧氏が考案中と伝えられる。独裁色が何処まで強まるかも焦点と考えられる。
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