今週のマーケットの振り返りレポート(2023年4 月15日)

株式・金融

Weekly 4月17日

米CPIで基調大きく変わらず

12日発表の米3月CPI(消費者物価指数)は前年同月比+5.0%(2月+6.0%、市場予想+5.2%)だった。ただ、家賃上昇などを背景にコアCPIは+5.6%、前月の+5.5%を上回った。同日発表の3月FOMC議事要旨発表で、12連銀中4連銀が0.25%利上げに反対した(据置とは限らないが)ことも明らかとなった。

つれて、5月0.25%利上げは70%の確率で依然優勢、米ゴールドマンサックスは6月利上げ予想を撤回した。一応、この日は売り方の警戒感が当たった格好で、大きなポジション調整には至らず、金利、為替は大きく動かず、株式はリセッション(景気後退)懸念から下落した。S&P11セクターのうち7セクターが下落、一般消費財-1.54%が最大。

関心は14日からの1~3月期決算発表に移る。アメリカン航空Gの第1四半期利益見通しが市場予想を下回ったとして、株価9.2%安が目立った。なお、翌日13日発表のPPI(生産者物価指数)は前年同月比+2.7%(予想は+3.0%)、コアのPPI は前月比-0.1%(予想は+0.2%)前年同月比+3.4%。パンデミック以降最も大きな落ち込みとなった。今回の統計は、米金融当局がこの1年ほど続けた利上げを近い時期に停止するという論拠を高める可能性がある。なお、5月のFOMC(連邦公開市場委員会)ではあと1回利上げすると市場では予想されている。また14日発表の3月小売売上は前月比-1.0%(予想はー0.5%)と2か月連続で減少、家計支出が冷え込み始めていることが示唆された。ただし、2月分が上方修正されたこともあって想定ほど弱くないと市場は判断。また、ウォラーFRB 理事が一段の利上げに前向きな発言で、この日NYダウは143ドル安。10年債利回りも前日から0.06%上昇して3.51%。

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海外勢、日本株ポジション再構築の可能性

13日発表の財務省・対外対内証券投資で、4月第1週の海外勢の日本株買い越し額が2兆3689億円に膨らんだことが明らかになった。2005年の統計開始以来過去最大。ただ、取得絶対額は14兆8155億円と3月前半に比べればそれ程大きくはない。3月後半以降、処分(12兆4466億円)が減っていることの投影と思われる。東証発表の第1週現物株買い越しは6796億円(先物は3861億円の売り越し)。統計手法の差が影響していると見られるが、3月までとは基調が変わったのは明らか。

財務省統計の2/19~3/25の合計は4兆1990億円の売り越し。欧米の利上げ狂騒と3月の銀行危機の影響が大きかったと見られる。とりわけ、日本株に影響力のあったクレディ・スイス関連の引き揚げ圧力が主因だったように思われる。「1~3月にリスクオフがあった場合、4~6月は買い戻しが起きやすい」と言われ、そのパターンが早くも始まった可能性がある。ただ、1~3月のNYダウ+2.85%(ナスダック+1.80%)に対し、日経平均+7.80%(TOPIX+6.07%)と波乱場面で優位性があった。

TOPIXは2000ポイント台に、もう何度目か乗せている。しかし、高市氏人気の21年9月2120ポイントをなかなか抜けない。「岸田首相では抜けて行けない」と言われて久しいが、リード役不在の影響も大きい。”脱炭素”がこけ始め、世界経済は怪しげ、そもそも米国相場が迷走している。妙にバブらず、ジリ高展開の方が望ましいと言えなくもない。

一時は中国深入り企業と見られたイオンが決算発表を行った。今期営業利益過去最高見通しが伝えられているが、前期に435億円の減損損失を行ったのが目を惹く。詳細は発表されていないが、有形固定資産を見ると、中国120億円、その他107億円の減少が目立った。中国営業収益はゼロコロナ終了で回復、前期比15.7%増収、52.4%営業増益だったが、地域別構成比は3.5%に止まり、4.9%に拡大したアセアンと水が開いた。投資額ではアセアン+58億円に対し中国-94億円。静かに「脱中国・アセアンシフト」が進行している印象だ。

ソフトバンクGのアリババ株全株売却意向、バフェット氏のBYD株売却継続、蘭プロサス(テンセントの筆頭株主、親会社は南ア企業、初期から投資していた)のテンセント株売却などのニュースが相次ぎ、静かに”中国株離れ”の動きもある。23年3月期の決算発表では、企業戦略も問われる方向となろう。

ブルームバーグは13日、「トヨタとエクソン、ガソリン車向けの低炭素燃料を試験運用」と報じた。温室効果ガスを通常のガソリン車に比べ、最大75%削減できる日が来るだろうとコメントしている。既存の技術の組み合わせとしているが詳細は明らかにされていない。トヨタとエクソンと言う巨匠が組んでいること、発電コストを考えるとEV車普及より現実的になる可能性があることなど画期的と思われるが、環境派から潰される可能性もある。

ただ、日本株に関しては、12日付けの日経新聞1面で、世界で最も信用力のある投資家として有名な「オマハの賢人」と称されるウォーレン・バフェット氏のインタビュー記事を載せている。見出しは「日本株投資を拡大」。この先日本株も何かが変わってくるかもしれない。しかし、まだ明確な方向性はなく、バブれるほどの強力テーマも見当たらない。先行き不透明感の強いまま、方向感の定め難い地合いが続くものと考えられる。

IMF 世界経済見通しを下方修正、景況感探る動きが続く

米市場は経済統計発表など大型イベント前に堅調な動きとなることがある。恒常的に膨らんでいる売り残のポジション調整も行われるためと見られる。米ゴールドマンサックスは「(今晩発表の)米CPIが今週の米株式市場の静けさを破る可能性がある」とガイドラインを示した。前年同月比伸び率が前月の6%を上回った場合はS&P500で少なくとも2%下落、市場予想の同5.1%以下なら株価は上昇するとした。結果はCPIでは株価はほぼ横ばい、翌日のPPIでNYダウは383ドル高。ナスダックも1.98%高。

11日にIMFが23年世界経済見通しを0.1%ポイント下方修正し2.8%としたことで、景況感下振れ警戒もある。イエレン米財務長官も「世界経済が直面する下振れリスクを引き続き警戒する」姿勢。ウクライナ情勢や金融システム不安を挙げているが、回復期待の強い中国経済の不透明感が強まっていることも背景と考えられる。

IMFが「金利はコロナ禍前水準に低下へ、先進国で”ゼロ金利制約”」との見方。米金利は1%台攻防に向かうとの見方。NY連銀総裁は「25年にインフレ率2%に戻る」(今年は3.75%近辺に低下予想)。市場はもう少し足元を見ていて、BofA(バンクオブアメリカ)は「米経済、第2四半期に縮小のリスク大」。

4月1日発表の韓国3月貿易統計で輸出は前年比-13.6%、うち中国向けは-33.4%。米向け+1.6%、EU向け-1.2%と明暗。品目別で半導体が-34.5%なので、対中先端半導体規制が影響している可能性があるが、スマホやパソコンなどの減産影響が大きいと見られる。

11日発表の台湾3月貿易統計は輸出-19.1%。2月-17.1%、市場予想-15.4%を下回った。うち中国向けは-28.5%(前月-30.2%)、対米も-20.7%。品目別では半導体-13.4%、電子部品-14.6%。品目が広がっている可能性がある。

4日発表のドイツ2月貿易統計は前月比+4.0%(市場予想+1.6%を上回った)で、対中輸出は同+10.2%だったので、政治的振り分けを行っている可能性もなくはないが、「中国経済急回復、世界を牽引」期待は修正されてきているようだ。

11日発表の中国3月CPI(消費者物価指数)は前年同月比+0.7%、前月の+1.0%から鈍化。PPI(生産者物価指数)は同-2.5%、前月の-1.4%から下落加速、20年6月以来の水準。中国政府は23年のCPI目標を+3%前後に設定(22年+2%)しているので、大きく下振れする状況。主因は「輸出受注の低迷を背景に製造業が失速」としているので、7日、李強首相は「輸出の安定化にあらゆる方法試みる」と述べた。

ロイターは11日、中国東部の江蘇省揚州市の2つの経済開発区で、2つの融資平台(資金調達プラットフォーム、シャドーバンキング)の債務が「制御不能」に陥っていると伝えた。当局は債務抑制規則案を作成し、資金調達コスト上限を6%に設定(中国10年債利回りは2.81%)、無謀な投資や新エネ車投資損失の回復に努めると発表した。融資平台危機が拡大ないし深化すると、チャイナリスクが爆発する恐れがあり、少なくとも内需による景気浮揚感を欠く要因になる。

どうやら地方政府に”成長ノルマ”が掛かっているようで、各地の代表団がアジア、欧州各地に繰り出している様だ。

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植田日銀新総裁スタート、景況感の強弱感攻防

植田日銀新総裁の初の記者会見を受けての市場反応は”円安”だった。結果的に、先々週のミニ「YCCアタック」(円債売り)は敗退したと思われる。植田総裁は、この後訪米(G20/IMF会合)、早くも国際デビューする。現状では、4月末の日銀金融政策決定会合は久々に無風会合になると思われる。

3月統計数値は上向き。10日発表の3月景気ウォッチャー調査(街角景気)は現状判断DIで前月比1.3ポイント上昇の53.3,先行き判断DIは同3.3ポイント上昇の54.1。コロナ終息トレンドや早い春到来による人流回復が原動力。小売店頭販売、外食などには追い風と受け止められる。同じく内閣府発表の3月消費動向調査では消費者態度指数(2人以上世帯)は33.9,前月比+2.6ポイント。コロナ禍前の40ポイント前後に比べれば水準は低いが、景況感は「持ち直している」。弱いながらも街角景気を裏付けた。賃上げ材料が押し上げ要因になるか注目されるが、景況感回復は何処かで再び「YCCアタック」を呼び込む可能性もある。

企業ニュースでは、「韓国ファナック、日本に5000億ウォン以上の配当」が目に付いた。韓国ファナックの大株主は94.7%が日本のファナックで、総額6000億ウォン(約600億円、従来は年間300億ウォン程度の配当)に迫る配当を実施したと言う。昨年段階で、利益剰余金1兆853億ウォン、現金及び現金性資産9265億ウォンを保有していたと言う。日本企業が海外で貯め込んだ資金の流動化を図ったものと思われる。韓国ビジネスは昔のような期待感はなくなっている。今後の関心は対中国(当局規制で資本自由化されていない)で同様の動きが出るかどうか。

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