今週のマーケットの振り返りレポート(2023年2月25日)

株式・金融

Weekly 2月27日

2つの要因で円は136円台へ

注目されていた次期日銀総裁候補の植田和男氏が臨んだ衆院での所信聴取では、現行の超金融緩和策を維持していく方針を明確に打ち出した。「安全運転」を志向した発言が目立ち、市場はその点を好感して日本株高で反応した。その一方で先々の政策修正の可能性も否定しなかった。

植田氏は2%の持続的・安定的な推移が見込めた際にイールドカーブコントロール政策(YCC)を修正すると言及しており、春闘における賃上げ率が3%に乗せて、消費者物価上昇率(除く生鮮食品、コアCPI)が2%超でかなりの期間にわたって推移しそうだとわかった際には、何らかの政策対応の可能性があるのだろう。当面は、春闘とCPI(消費者物価指数)の動向がより注目されると予想する。日本の経済指標の一部が、久しぶりに市場の注目を集める局面がやってきそうだ。

同日、米国ではFRBが物価指標として重視する1月のPCE物価指数が発表され、変動が大きい食品とエネルギーを除くコア指数が前年同月比4.7%上昇した。伸び率は前月(4.6%)から加速し、市場予想(4.4%)を上回った。インフレが沈静化に向かっているとの市場の見方に反する内容で、FRBの利上げが想定より長引く可能性への警戒が急速に強まった。このため米債券市場では長期金利が上昇し、植田氏の現行の金融緩和策を維持する発言と合わせて、円ドル相場はNY時間に入ったころから136円台の円安で推移している。

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米連休明け、売りから入る

先週は日米ともそれぞれ祝日があり、やや不規則な週でもあった。プレジデンツデー明け21日の米株市場は大幅安となった。2月前半で買い戻し相場が一巡し、体制を立て直した売り方が再攻勢を掛けて来た印象がある。主要3指数は12月15日以来の大幅下落率、697.10ドル安のNYダウは年初来の上昇分を一気に消した格好。S&P500指数はフシ目の4000ポイント大台を割り込んだ。VIX(恐怖)指数は15日の18.23から21日22.87に上昇している。1月3日の22.90以来で、さらに上昇するかどうか、続落拡大かどうかの目安と思われる。

この日は、このところ上昇基調だった米債利回りが一段と上昇した。2年債は一時4.738%、11月8日以来の高水準、10年債は一時3.962%、11月10日以来。日々振れるが、金利先物市場は7月に5.36%でピーク、年末5.18%に低下を見込む。利上げが5~6月まで続くとの見方に変わっている。ただし、前述した24日の1月のPCE物価指数で金利先物市場は、利上げは7月まで続くとみている。

強めの景気指標に反応する地合いが続いているが、21日は2月ユーロ圏PMI(総合購買担当者景気指数)が52.3(1月50.3)と9か月ぶりの高水準となり、指標の独2年債利回りが14年ぶり高水準の2.956%に上昇した展開を受け継いだ格好。ECBの3月利上げは0.50%が見込まれている。米PMIは50.2,8か月ぶりの高水準。ただし、米国天然ガス相場は9%下落、北海ブレント原油は1.2%下落とインフレ感が高まった訳ではない。

米市場が期待していた小売企業決算が失望材料となった。ウォールマートの24年1月期予想は市場予想を下回り、2期連続減益見通し(ただ株価は朝安後0.6%高)。需要鈍化を警告した住宅用品販売のホーム・デポは株価7.1%下落、3ヵ月ぶり安値。今週決算発表の同業ロウズが5.1%安、S&P一般消費財3.3%安。1月中古住宅販売が2010年10月以来の低水準、著名コンサルティングのマッキンゼーが過去最大級の2000人人員削減、会長の発言を巡ってスイス当局が調査と伝えられ、クレディ・スイス株が上場来安値更新、など明るい話はなかった。

侵攻1周年直前の21日にベラルーシ国防省が「国境付近にウクライナ軍の大部隊が集結、安全保障脅威になっている」と表明したことも緊張を誘ったと見られる。偽旗作戦はロシアが得意とするところ。事態を見守る姿勢が続こう。

23日のナスダックを止めたのはエヌビディア決算

22日の米株市場は軟調だったが、23日のナスダックは+0.72%高と反発した。牽引役は14%高の半導体大手エヌビディア株。22日引け後に発表した第1四半期(2-4月)売上高見通し(65億ドル±2%)が市場予想平均(63.3億ドル)を上回った。第4四半期(11月-1月)売上高は60.5億ドル(市場予想60.1億ドル)。AI(人工知能)技術開発競争が激しくなっており、同社のGPU(画像処理半導体)需要が押し上げるとの見方を好感した。AIを使ったチャットポット(ChatGPT)で先陣を切ったのはマイクロソフト、対抗するグーグルは独自戦略、アマゾンは競合スタートアップ企業ハギンス・フェイスと提携拡大、アップルは今のところ静観、というのが大雑把な構図。勝敗はクラウドビジネスを左右すると見られる。つれてSOX指数(半導体株価指数)も+3.33%。

ウクライナ情勢は、ロシアが突然、空爆を開始する懸念などが去った訳ではないが、ウクライナへの戦闘機供与話での牽制、バイデン米大統領のキーウ訪問からG7会合などを集中させる作戦などが今のところ奏功しているように見える。22日の中国外交トップ王毅氏とプーチン露大統領会談を受け、「4月にも習主席訪ロ、和平仲介か」との観測が流れた。既に、「4州割譲案」などにブリンケン米国務長官等が警戒感を示しているが、ヤマ場が大幅に先送りされる可能性がある。

その中国は日本に対し、商務省が「日本の半導体輸出規制に大きな懸念」外務次官が「中日関係の重要性は不変、後退させてはならない」、4年ぶりとなる日中安保対話開催で「日中間の意思疎通を継続、強化で合意」。21日に習主席は「中国が自立して世界の技術大国になるためには、科学技術分野の基礎研究を強化する必要がある」。日本学術会議など、親中科学技術勢力が揺らいでいる局面で、日本に硬軟合わせての圧力を掛けている可能性がある。米国遮断が効き始めている可能性があり、容易には対ロ支援に踏み切れない一因になっている可能性がある。

個別物色地合いで、材料が増えている。この日米インテルが大幅減配で売られ、祝日前の22日東京ガスも総還元性向引き下げで売られた。値上げ成否で企業業績明暗が拡大(豪ドミノ・ピザが値上げに伴う顧客離れで株価急落。逆に値上げ浸透銘柄が買われる展開)、トヨタとホンダが春闘早期満額回答、ウォール街でアクティブ運用ETFが活況なども目に付いた。引き続き、個別物色地合いと考えられる。

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強まる対米従属。目立つエマニュエル駐日米大使積極活動

元々、慎重姿勢と見られていた岸田首相がLGBT法案に前のめりになっている。その分、国会の予算審議は宙に浮いている印象がある。転機となったのは2月7日、米国のジェシカ・スターン特使の来日と言われる。その3日前の2月4日にオフレコ失言の荒井秘書官が更迭された。スターン特使来日を積極的にバックアップしたと見られるラーム・エマニュエル駐日米大使は、ツイッターで「この訪日は最高のタイミング」と書き込んだ。LGBT活動家と積極面会し、17日には「日本の国会が民意を反映し、差別に反対すると信じています」と念押ししている。

岸田内閣は、対米従属、財務省ベッタリ、親中姿勢、党内派閥配慮などと批判されてきたが、年末の安全保障・防衛予算大幅拡大も含め、対米従属色が突出する状況と考えられる。

エマニュエル大使は企業経営者とも積極面談することで知られ、13日には日本原燃の増田社長(原子力)、川崎重工の金花会長・橋本社長(水素燃料電池)と別個に面談している。エネルギー問題に関心を深めているのであろうか。

バイデン米大統領は(予想通り)キーウを電撃訪問した。G7首脳で未訪問は岸田首相のみとなるので、水面下で圧力を受けるのであろうか。”ウクライナ勝利”は来年の米大統領選に向けての必須アイテムになっていると思われ、あの手この手でロシア封じ込めを図ると見られる。

当面の大きな焦点の一つは、ブリンケン国務長官が強硬姿勢で、バイデン大統領が対話姿勢の「中国のロシア支援」問題と見られる。中国外交トップの王毅氏の訪ロが注目される。海外投資家の対中投資にも影響すると考えられる。

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