今週の株式市場の相場見通しレポート(2023年1月9日)

株式・金融

Weekly 1月9日
 
新年最初の取引だった3日の米株は下落スタートとなった。テスラ12%安、アップル3.7%安、エネルギー株3.6%安などが重荷となった。しかし、6日発表の経済指標はいずれも利上げ減速期待を高める結果であった。ISM非製造業景況感指数は予想の55.1に対し、好不況の境目である50を割る49.6だった。
さらに12月の雇用統計では就業者増加数が22.3万と予想の20.3万人を上回ったが、FRB がもっとも警戒している平均時給が前月比+0.3%、予想の+0.4%を下回った。このため株式市場は買い戻しが優勢、NYダウは700ドル高で週を終えた。経済指標の弱含みは早期のFRBの金融引き締め減速や利下げにつながるとの見方が株高を誘ったが、現時点の基調は年末と変わらない印象。12日の12月CPI(消費者物価指数)の発表は要注意。
ロイターによると「空売り勢、22年は約3000億ドルの収益」
ブルームバーグによると「株式ヘッジファンド、巨額の資産消失」(2年連続マイナスで50%程度資産消失)。買い方に勢いが無く、売り方の勢いが変わらないと小刻みな売り主導相場が、当面は続かざるを得ないと思われる。大勢となっている待機勢が何処で動くかが年間見通しではポイントと考えられる。
同じ下落でも、エネルギー株の下落は原油相場の4%下落、天然ガス相場の10%下落が背景。意外にも欧州が暖冬で、1月前半も気温は例年を上回る見通し。12月寒波の米国も1月半ばまで好天、東京も1月半ば頃に気温急上昇の可能性が報じられている。インフレ観修正ほどの影響となるか注目される。
年初恒例のユーラシア・グループによる今年の10大リスクで、1位は「ならず者国家ロシア」。屈辱のロシアは戦争に勝つための軍事的選択肢が残っておらず、「核脅威はこれまで以上に強まるだろう」としている。単純に言えば、ロシアが「イランや北朝鮮化する」。タイトルから見れば、ポスト・プーチンにも期待が持てないと言うことであろう。
2位は「権力が最大化された中国の習近平国家主席」
アップル、テスラの下落はこのトレンドを反映したものと見られる。腹心で固めた政権は自由に政策を追求できるが、「大きな間違いを犯す可能性がある」
12月30日にプーチン-習近平電話会談を行っており、「軍事協力深化」で動きが出るか注目される。
 
 

相場は不安定ながらインフレ攻防継続か

年末の東証空売り比率は、12月28日45.7%、29日51.4%、30日48.0%。年末年始のリスクヘッジ部分は買い戻しから入ると思ったが、4日は49.7%、5日は51.0%と高水準が続いた(6日は48.5%)。日本の後追い金利上昇(債券売り)、円高、株売り目線が強かったためと考えられる。株式のロング・ショート運用では、金融株の買いに対し海運、鉱業、医薬品を中心に売りが広がった。
4日財務省発表の対内対外証券投資で、12/18~24の海外投資家による日本の中長期債売り越しは4兆8623億円。6月の日銀政策修正観測による売り越し4兆8112億円を上回り過去最大。20日の日銀YCC修正(事実上の利上げ)の衝撃が大きかったと思われる。どれだけが空売りかは分からないが、3日のドル円130円割れも海外勢主導と伝えられ、もう一段の緩和修正を睨み、17-18日開催の日銀金融政策決定会合に向けての攻防と受け止められる。
追い討ちを掛けたのが岸田首相。3日のラジオ文化放送番組で「アコード(政府と日銀の共同声明)を見直すかどうかも含めて新しい日銀総裁と話をしなければならない」。黒田日銀総裁の早期辞任観測まで呼び込んだ。市場で、”コロナ禍ならぬ岸田禍”と揶揄される所以。4日恒例の新春記者会見では言及しなかったが、「何が新しいか分からない」新しい資本主義、「異次元の」少子化対策では持ち直しには至らなかった。
インフレ減速の足音は欧州から。仏12月インフレ率は前年比+6.7%(11月+7.1%、市場予想+7.2%)、ドイツ11月輸入物価は同+14.5%(前月比-4.5%、市場予想+18%)。4日も暖冬で天然ガス相場が続落、欧州株は連騰となった。
日米の株価がさえない中、年初から気になっていたのが香港ハンセン指数の急騰。3日の+1.84%に続き4日は+3.22%で20793ポイント、5日も1.25%上昇して21052ポイントと21000乗せ、昨年7月以来の水準。ところが、年末年始のニュースは芳しくない。正式発表が無く実態不明のコロナ感染では、国立感染症センター・張文宏所長の発言として「現在の感染率は50~60%、春節期間中に感染率80%に達する可能性がある(単純計算で11億人)」
死亡率は日本の1.5~1.6%程度に対し3%強(実態は不明だが、共産党員も大量の死者が出ているとされる)と言われ、英調査会社は1日当たり9000人と試算。韓国・中央日報によると「感染者”津波”で企業6割ストップ、1ヵ月間の早期春節連休」
結果、1月の経済状況は変わらず、「3月5日開幕」と報じられた全人代での政権一新で”好転”が演出される可能性がある。
また、対策が妙に個別具体化して来たことも背景にある。「システム上重要な不動産業者に支援検討(中国恒大は昨年末期限の再建計画を発表できなかった)」、「住宅PE(プライベート・エクイティ)ファンド認可再開」、「アリババ傘下のアントに消費者部門の増資を承認」、「半導体への巨額投資休止へ(中国製造2025は断念?)」、「電力会社などに豪州産石炭の輸入再開許可(ロシア産価格は抑制?)など。
 
 

チャイナ・リスク、春節に向け緊張材料となるか

5日の日本国内のコロナ死者数は過去最大の498人、感染者数23万979人、12県で過去最大。年末年始の遺漏分があると見られる。全国重症者数は650人だが、病床使用率は愛媛県の88%を筆頭に30都道府県で50%超となり、医療逼迫感が強まっている。世界統計で感染者数は韓国を抜き6位、死亡者は23位。
この中で、中国の春節を迎える。中国の感染実態が分からず、日本をはじめ、各国が入国検査体制を一斉に強化しているが、拡散を防げるか不透明。中国オンライン旅行大手トリップドットコムによると、海外旅行予約件数は前年比6.4倍。人気は豪(メルボルンは前年比50倍)、タイ(バンコクは10倍以上)、日本と続く。中国は8日でゼロコロナ政策終了、香港往来などが検査・対策なしとなる。
中国非難に回っているWHOによると、中国感染者の97.5%がオミクロン変異株の亜種(BA.5.2,BF.7)としているが、インドでは年末年始の海外旅行者から11種の変異株が見つかっており、事態が急速に変化する恐れがある。5日、バイデン大統領は「中国のコロナ対応を懸念している」と表明。米国で警戒感が高まるか注目される。
13日に岸田首相は訪米し、日米首脳会談が行われる。それに先立ち、西村経産相が訪米しており、経済安全保障2+2が開催される(南米歴訪中の林外相は外され、同氏は米国の親中派警戒と見做されている)。人権問題からウイグル産品輸入禁止や関連企業の金融制裁、半導体規制の連携などが話し合われ、日米共同声明になる可能性がある。
共同で監視組織を作るとの観測も出ている。中国は12月30日に「反スパイ法」改正案を発表、一気に摘発体制を強化する意向。双方で経済安全保障が強化され、企業活動に大きな影響が出る可能性が高まっている。5日、ソニーGのウェイボ公式アカウントが閉鎖された。10月に中国を侮蔑する内容があったとの批判に対応したものと見られる。
西村経産相は5日、CSIS(戦略国際問題研究所)で講演。「(中国を例示し)経済的威圧への対応は5月広島サミットの主要議題」と述べた。不適切な技術流出を防ぐため、輸出管理の重要性に言及、「国際協調で厳格な輸出管理を行う」と述べた。企業不祥事の一つとなる公算が大きい。
中国株の続伸には中国経済の回復期待が背景と見られるが、そう楽観視できる状況にはない。企業の対応にも差が出始めており、一般的な中国懸念も適切ではないが、中国情勢が西側市場の動向に影響を増すと考えられる。
 
 
 

 

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