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今月の株式相場見通しレポート(2023年2月、今月は見通しではなく資産運用の必要性の話になってます)


Monthly 2月号

人生100年時代の資産運用の必要性

 来年1月から新NISAが始まる。人生100年時代に対応してか、現行NISAより投資額などの拡大は個人にとってメリットは大きい。NISAの拡大で感じるのは、政府も我々に「人生100年時代」に対し「自己責任」を求めているのかもしれない。

ライフ・シフトと100年の人生戦略

 数年前にロンドンビジネススクールの教授であるリンダ・グラットン氏が「ライフ・シフト100年の人生戦略」を出版し、日本でも大きな話題になった。この本の要旨は「長寿時代のキャリア構築」だ。このレポートの執筆時点で岸田首相が「育児中のリスキリング」発言で野党から批判を浴びているが、この「リスキリング」とは、職業能力の再開発、再教育のこと。そこで、「ライフ・シフト」に対応して、現役時代に個人が用意すべき対策をまとめてみた。これらの項目は筆者の経験も含まれている。

一般的に「ライフ・シフト」を考える人にとって、現役期間の延長と技術進歩との相互作用によって、例えば22歳までに受けた教育で、その後の長い現役期間に対応出来るのかを心配だ。そういうことから「リスキリング」の認識は必要になってくる。

一般的に特定の製品・サービスを扱う企業の場合、社員の現役寿命以上にビジネスが存続できるかというリスクもある。「ライフ・シフト、100年の人生戦略」では、大学教育の後何年か「放浪」してみたり、二つの職業キャリアの間に教育あるいはリ・クリエーションのための充電期間を設けたりするようなライフ・プランを提示しているが、吸収力が旺盛で生産性が高い若い年代で集中的に仕事の経験を持たないのは、本人にも、社会にも非効率的だし、転職の狭間に「無職」の期間を設けるのは、キャリア・プランとしても経済的にも愚策に思える。

現実的な選択は、働き「ながら」、①自分を再教育する、②副業(ないし複数の会社に勤める「複業」)を行う、③転職活動を行う、④起業の準備をする(情報・資金集め、顧客の確保など)、といった「ながら戦略」を上手に組み合わせながら、現役期間の長期化に対応すべきだということだろう。

【マネきゃん/Money Camp】

2019年の「老後に2000万円」問題

さて、大きな反響を呼んだ人生100年時代に加え、数年前に「老後に2000万円必要」というのが話題になった。このフレーズは、金融庁が2019年6月に公表したレポートの記載のちょっとした一文がマスコミで大きく拡散されたのだ。

金融庁のレポートでは「老後に2000万円」は2カ所にしか出てこないし、さらに「この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。」と断っている。どうやら、あくまで一例としてあげた数字だったのに、そこだけが切り取られて一人歩きし多くの人がショックをうけたのではないだろうか。

金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」では、この「老後に2000万円」の元となったデータは2017年の家計調査年報(総務省)をベースにしており、数字の内訳は以下のとおり。

高齢夫婦無職世帯(いわゆる年金生活世帯)

 支出合計: 263,717円

  (消費支出 :235,477円)

  (非消費支出:28,240円)

 収入合計: 263,717円

  (公的年金等社会保障収入:191,880円)

  (その他収入(仕事や企業年金等):17,318円)

  (不足(取り崩し)  54,519円)

これに「人生100年時代」を想定して30年を単純計算すると月54,519円×12×30年=1963万円となる。報告書では「月約5万円×約30年」としている)。ちなみに、2019年時点の高齢夫婦無職世帯の資産残高は、金融資産だけで平均2,317万円である。
 「老後2000万円不足問題」が一過性の騒ぎで終わったようだが、問題はこれからの高齢者が経済的に厳しくなっていくことは確かであり、だからこそ漠然とではなく、対策を講じられるようにしなければならないことにある。

現代は、平均寿命が伸びて「人生100年時代」とも形容される超高齢社会への突入が始まっている。そんな中、退職給付額(退職金)は減少傾向にあり、1992年度には企業の92%に存在した退職給付制度が、2017年には80.5%の企業にしか存在しない状況。企業規模が小さくなるほど、退職給付制度が用意されている割合も低くなる。

また、退職金給付金額が減少傾向にあるので安心できる状況ではない。例えば、「大学卒業者または大学院卒業者、管理・事務・技術職、勤続35年」というケースでは、1997年に平均3,203万円だった退職金が2017年には平均1,997万円になっており、3~4割程度も減少している。かつてのような「退職給付と年金をベースにして豊かな生活を営む」という老後のイメージに当てはまらない人が増加するかもしれない。

現在のゼロ金利政策の環境下において貯金だけで2,000万円の資産を形成するためには、35歳から65歳まで毎月55,500円程度の積み立てをしなければならない。現行の積み立てNISAの年間枠は40万円(月33,333円)、しかし来年1月から120万円(月10万円)に拡大する。現役世代ほど新NISAを利用し資産運用を考えるべきだろう。

 投資と資産運用の違い

資産運用を始める前に、投資と資産運用とはどう違うのか分かる人は少ない。ほとんどの日本人は同義語として使っているので、定義を明確にしたほうがよさそうだ。投資とは英語で「Investment」、資産は「Asset」、運用とは「Management」。つまり資産運用を「Asset Management」という。投資は財産を増やすため資金を出すことで、株式や債券に投資する。運用とは管理、運営のことで資産運用とは、長期的な展望で考えて投資した資産の総合戦略のことである。

資産運用の王道は「長期と分散」だ。つまり、世界中の株や投資信託に分散投資をし、それを長期間保有し続けることで、局所的もしくは一時的に景気の波をかぶったとしても着実に資産を増やしていく。これが資産運用の王道であり、「コア」となるべきだ。

ところが、日本ではなぜかこのコアの重要性が語られず、比較的リスクの高い商品ばかりに注目が集まってきた。

最近の例で言えば、ビットコインなどの「仮想通貨」。一獲千金に成功した一部の投資家が「億り人」として注目される裏で、投資の初心者の多くが損失を被った。また、シェールガスや人工知能など特定のテーマに関係する銘柄を集めた「テーマ型投信」も、初心者には難しい商品だ。証券会社が良く薦めるテーマ型投信はその時の旬の銘柄を組み入れて公開されるわけだから、株価はすでに相当買われており、高値でつかんでしまって損をしてしまうケースが多い。個別株やFX(外国為替証拠金取引)も同様だ。これらはすべて値動きが激しく、短期投資である点に特徴がある。

投資を恐れて預貯金中心から抜けきれない人か、ハイリスク商品を買う人か。この両極端の投資スタイルしかない日本は、変わらなければならないし、変わっていくと思う。

資産運用が必要な時代に

「長期と分散」型の投資を資産運用の「コア」とすれば、短期投資の商品群は、いわば「エンターテーメント(筆者は個人投資家の投資を常々そう思っている)」と言える。リスクが大きいということはリターンも大きいため絶対に手を出してはいけないというわけではないが、問題はその比率だ。

老後に備えることを目的に資産を運用するのであれば、コアを8割、エンターテーメントを2割以下に抑えるのがあるべき姿と思う。富裕層の多くもこの方針にのっとって資産を運用しているが、日本ではなぜか、この「コア・エンターテーメント」のバランスを取りながら資産運用をしていく考え方が普及してこなかった。

実際の資産運用が身近にならないのは、「これまでニーズがなかった」からでもある。日本人がこれまで、資産運用をせずに済んできた最大の理由は、1つの会社で定年まで勤め上げれば国と会社が老後の面倒を見てくれるという、日本型の終身雇用制度と年金制度があったからだ。これらが機能していた時代には、そもそも個人が投資のことなど考える必要もなかったようだ。運良く大企業に勤めることができたならば手厚い退職金と年金が保証され、それだけで十分、老後を安心して暮らしていくことが可能だったからだ。商品を提供する側の日本の金融機関も、働く世代の資産運用のノウハウや知識、経験に乏しいままだ。

2022年は株式、債券ともにマイナスのリターンだった。過去100年の金融市場の歴史の中でわずか3度目という奇跡的な年でもあった。昨年の米ナスダックの年間パフォーマンスは33%の下落、S&P500 は19%の下落、日経平均は9%の下落だった。個別銘柄は株価指数よりブレるため損失はさらに大きかったはずだ。一方で資産運用では分散投資をしていれば、損失はもっと小さかったはずだ。

資産運用にとって重要なデータとは

資産運用にとって重要なデータは、各資産の1が期待収益率、2は標準偏差(リスク)、3は相関係数になる。期待収益率とは、過去の平均リターンで表す。ポートフォリオの相関係数とは、2つの資産の値動きの関連性を表す統計値のことを指す。

「すべての卵を一つのかごに盛ることはリスクを高める」という表現は有名なリスク戦略として知られている。この言葉は分散投資のことを説明している。資産運用で重視するのはリスク。リスクという言葉は、イタリア語の「Risicare」という言葉に由来する。この言葉は「勇気をもって行動する」という意味を持っている。金融市場では、このリスクは標準偏差で表され、価格のブレのことを指す。

分散投資は単に株式や債券などの資産の数を増やすのではなく、各資産の相関によって、その効果が決まる。分散投資を考える際、相関係数を利用すると、どの資産を組み合わせればリスクの軽減につながるかがわかる。例えば、株式と債券は逆の値動きをする代表的な組み合わせになる。通常、株式市場が下落する局面では債券市場に資金が流入しやすくなることから、それぞれに分散投資をすると損失を減らすことができると予測できるのだ。

分散を成功させる秘訣は、古い金言「正反対のもの同士は惹かれあう」にある。投資用語を使えば、値動きの原因を共有しない国内外の経済セクターに分散せよということになる。これを定量的に表すのが相関係数であり、資産運用には欠かせない。相関係数は1からー1までの数値で表される。1は2つの資産が全く同じ動きをする。逆にー1は真逆の動きをすることになる。

資産運用の成功のカギはアセット・アロケーションと積み立てNISA

そして最後に最もパフォーマンスを左右するのが、アセット・アロケーション(資産配分)だ。資産運用の成功のカギはアセット・アロケーションに8~9割依存しているといわれている(銘柄の選択やタイミングではない)

若い人には資産運用できるほどの資金がない場合、毎月の積立で投信を買っていくやり方がある。つみたてNISA がそれだ。いわゆるドルコスト平均法が利用できる。ドルコスト平均法のメリットは高値つかみを防ぎ、安値でも購入続けられる。通常、相場の下落場面では怖くて買いづらいが、ドルコスト平均法で機械的に購入することで購入コストを下げる。逆に高値圏での集中買いを防げる。

逆にデメリットは、上昇相場では安いところで買った一括購入に比べてパフォーマンスが悪い。また、永遠に右肩下がりの相場であれば、回復不可能(日経平均が最高値を付けた1989年から始めたら、2006年まで利益はなかった。その後アベノミクスで大幅に回復)。

資産運用は総得失点差を争う競技

 多くの投資家は勝率が高い投資を良いと投資だと信じている。だから相場の読みを当てたがる。実際読みが当たった人を崇める(いつも当たるわけないのだが)。しかし、高い勝率を目指すことは、僅差で勝ち大差で負けることがしばしば起こる。逆に資産運用は長い時間をかけて勝率でなく総得失点差を競う競技なのだ。分散投資によって大損を避ける運用が重要だ。

それでは具体的にどういったポートフォリオを組んで2023年前半の資産運用を行っていくかだが、今、世界の金融市場は米国の利上げの行方を見守っている。米国のインフレも少し落ち着いてきたため、市場では利下げの時期を探っている状態だが、現時点ではやや楽観的ではないだろうか。したがって、ポートフォリオは、世界の主要株式市場で最も割安な日本株を40%、ヘッジあり(円高とみている)の米債券ファンド20%(米長期金利の下げ期待)、23年になって欧州の景気持ち直し期待で欧州株20%、中国の新型コロナ対応の緩和による景気回復期待でアジアに20%とする。ただし、米金利利下げの可能性が濃厚になってきたら、欧州株かアジア株のどちらかを外して、米テクノロジー株ファンドに転換する。  以上が簡単なポートフォリオだが、2023年はまだまだ厳しい年になりそうだ。本当にインフレは収まったのか、世界景気は浮揚するのか、重要なファクターがいくらか不透明なため、相場の読みに賭けるのは避け分散投資を心掛けるべきだ。

運用のご相談や何かお問い合わせがありましたら、お気軽にK&Cアセットマネジメント株式会社にご連絡ください。

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