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来週の株式市場の相場見通しレポート(2023年1月28日)


Weekly 1月30日

買い戻し基調持続の公算

26日引け後発表された1月第3週の海外投資家の先物売買は3567億円の買い越しだった(現物株987億円の買い越し)。12月第2週から1月第2週まで5週累計の先物売り越しは2兆656億円だったので、ソロリ買い転換の印象。もっとも、買い戻し基調が強まったのは先週の第4週からなので、買い転換が確認されたことに意義があろう。

今週、春節明けを迎える中国では、26日に一歩早く香港市場が再開。ハンセン指数は2.37%高、本土株対象のハンセン中国株指数は2.98%高と急伸。ハンセン指数は昨年3月2日以来の高値(上海ロックダウン以前)。ゼロコロナ解除の影響は、悪材料はそれ程出ず、消費需要拡大が注目された。海外旅行は豪、タイが中心だったようだが、喧伝された程の規模にはならなかったようだ。習主席は「オーストラリアデー」メッセージで、緩和傾向の中豪関係を「正しい方向へ進んでいる」と歓迎、当面宥和姿勢を示した。

米GDP(22年第4四半期)は市場予想+2.6%を上回る前期比年率換算+2.9%。米経済のリセッション懸念が後退したが、押し上げ要因は在庫急増(GDPの伸びを1.46%ポイント押し上げ)で、「米経済は崖から落ちている訳ではないが、スタミナを失いつつある」という市場コメントも。週間新規失業保険申請件数は6000件減の18.6万件。この時期の雇用統計は当てにならないが、来月初めの雇用統計への警戒感が緩む要因。原油相場は上昇したが、米天然ガス先物相場が1年7か月ぶりに3ドル割れ。予想外に暖冬基調で、在庫荷もたれ感が出ていると言う。どうやら再開されるようだが、テキサス州のLNGターミナル長期閉鎖(日本のガス会社に打撃)で輸出減も背景。

 

低PBR企業に東証が改善求める

驚いたのは、PBR(株価純資産倍率)1倍割れ継続の日本企業、「東証が改善策など開示を要請方針」と伝えられたこと。1倍割れはプライム市場で910銘柄/1828銘柄、スタンダード市場で901銘柄/1434銘柄ある。プライムの低PBR1位は千葉興銀0.17倍、三菱製紙と大分銀行0.18倍。このところ上昇しているとは言え、銀行株の大半、鉄鋼株など業界ごと低水準。どうやって1倍回復させようとしているのか、持ち合い株を放出させながら新たな株式持ち合い仕組みでも作ろうと言うのか、新規公開を推進しながら大量の退場勧告でも行うのか、お役所仕事で終わるのか。1倍割れを無くそうとすれば新たなバブル相場を作るしかないように思うが。なお、PBRはPER(株価収益率)とROE(自己資本利益率)を掛け合わせたもの。PER が一定ならROEを高めればPBRは上昇する。今回の東証のアクションは多少、企業に緊張感をもたらす要因と見ておきたい。

景気減速懸念緩和、2月1日のFOMC で0.25%利上げか

明確な指標がある訳ではないが、昨年末に掛けて高まったリセッション(景気後退)懸念が緩み、売り方の買い戻し姿勢が続いていると思われる。流動的ながら、景況感は欧州から緩んできたが、その背景には、懸念された年末年始の大寒波が無く天然ガス相場が比較的低位安定。ウクライナは膠着状態から米独主力戦車提供に駒を進めたなど。1月独IFO期待指数は4ヵ月連続改善し、改善幅拡大。25日の独政府23年経済見通しは10月の-0.4%から+0.2%などがある。なた、中国改善期待、米企業決算懸念後退なども影響している状態と考えられる。

米国の先行指標の一つと見られるカナダ中銀は0.25%利上げ(15年ぶりの4.5%)を発表したが、(これまでの利上げ効果を見極めるため)「利上げを一旦停止する可能性を示唆した」ことが注目された。2月1日の米FOMCで0.25%利上げは大勢だが、3月は微妙な情勢。  

米債券相場は5年債入札(430億ドル)が堅調だったこともあり、総じて利回り低下気味。金利上昇(債券売り)ポジションは崩れたのだろうか。

今のところ米決算発表の市場の反応はマチマチ。好決算銘柄が予想より0低調で売られたり、低調決算が悪材料一巡感で買われたり、方向感は無い。注目点は、石油大手シェブロン(決算発表は27日)が「4月1日開始で750億ドルの自社株買い」を発表。既存プログラムの3倍の規模で6.3%の増配も発表した。油田サービスのハリバートンは市場予想を上回る決算を発表。利益率は2012年以来の高水準で、今年の北米顧客の支出は15%伸びると強気。再エネ沈滞ムードの裏返しで、エネルギー関連の見直しが注目される。

25日の引け後発表のEV大手テスラは10‐12月利益が市場予想を上回った。大幅値下げの影響があったようだが、増産を計画通り進められるか不透明感は残る。

 

決算含め材料交錯も、崩れなかったこと評価か

詳細は分からないが、24日のNY証券取引所は取引開始直後に多数の銘柄の取引が一時停止された様だ。寄付注文の一部は取り消され、取引停止中に乱高下する銘柄もあり、80超の銘柄が影響を受けたとされ、技術的問題と報じられた。佳境に入った決算ラリーはマチマチで、全体は小動きだった。

米司法省がグーグル(アルファベット)を独禁法違反で提訴した。広告事業の解体を求めるもので、提訴は20年10月スマホ検索サービスを巡るものに続く。NY州や加州も参加し、民主党色が強い。アルファベット株は2.1%安。一方、マイクロソフトは10-12月期利益が予想上回り、時間外で4%高。クラウドサービスの好調(クラウドサービス「アジュール」は31%増収。アマゾンのシェアを食っている可能性)がパソコン不振をカバーした。

市場で織り込まれたかどうか不明だが、ドイツが戦車「レオパルト2」、米国が「エイブラムス」をウクライナに供与すると報じられた。ウクライナの領土奪還との見方になるのか、2-3月のロシア大攻勢への備えとの見方になるのか、欧州情勢を注視したい。

日本企業では、日本電産(6594)が3月期通期営業利益見通しを47.6%下方修正した。

売上高は上方修正しており、構造改革費用が特殊要因なのかどうか。前日に業績下方修正した亀田製菓株は4%下落しているので下落率が焦点。下落が大きくなれば、中国EV生産失速(12月末で補助金終了、コロナ感染で工場稼働不調など)、HDD(ハードディスクドライブ)不振などに懸念が広がる可能性がある。全体は買い戻し相場過程の綱引きと受け止められる。

 

売り方、ジワリ劣勢、リセッション懸念後退

26日のシカゴ日経平均先物は27100円台で戻って来た。日銀の政策修正発表前日の12月19日の日経平均終値は27237円、日銀によるYCC(イールドカーブコントロール)修正の12月20日が26568円。連続的利上げを見込む国債売り、株先売り、ドル売り円買いの攻勢で、2兆円規模と見られる日経平均先物売りの平均コストは27000円以下と見られるので、ポジション維持の正念場だったのだろう。ドル円は12月19日が136円、その後の円高水準127円、中値の131-132円処が勝負水準と考えられる。

急激な踏み上げ相場(売り建てていたものを損失覚悟で買い戻すこと)が起こるかどうかは分からないが、軟弱相場局面で喧伝されたリセッション懸念が緩んできている。キッカケは「ゼロコロナ解除に伴う中国需要回復」で、コモディティ関連、欧州高級ブランド、さらに半導体関連に急速に広がってきている。

珍しくNHKが売り方の動向を伝えた。22日、「金融緩和策の修正見越し投資家の動き活発に」で、英ヘッジファンド・ブルーベイAM(運用資産950億ドル超)の最高投資責任者インタビュー記事を配信した。12月の日銀YCC修正で儲け(したがって、5-6月に失敗したファンドではないと見られる)、10年債0.22%で売り、昨年のリターンの半分ほどを日本国債売りで稼いだと言う。0.5%近辺で一旦買い戻したが、1月18日の金融政策決定会合後、再び同規模の売りポジションを再構築したと言う。ドル売り円買いや株先売りを組み合わせているかの言及はないが、早ければ3~4月の再利上げを見込んでいると言う。

18日の日銀会合後、裏目になったヘッジファンドもあったと思われるが、買い戻し圧力が意外に高まらなかったのは、売り直しの勢いがあったためと思われる。ただ、20日、ダボス会議で黒田総裁が「現在の極めて緩和的取引を継続する」と述べたことで、夜間取引の日経平均先物はジリ高展開となった。したがって、今週の相場動向は買い戻し圧力で左右されることになろう。

黒田総裁はダボス会議で「我々の希望は、賃金が上昇し始め、安定的かつ持続的な2%インフレを達成できるようになること。ただし、暫く待たねばならない」と述べた。2月10日に指名される次期総裁が、黒田総裁姿勢を引く継ぐのであれば、値上げ、賃上げが集中する年度替わりは見極め期間となる。日本勢が「再調整に動くのは5~7月」と見るのは、この要因が大きいと見られる。

もっとも、金融情勢は海外要因の方が大きい。ウクライナ情勢、中国情勢、さらに米国情勢(2月1日FOMC、連邦債務上限問題、機密書類問題や長年の側近のクレイン大統領首席補佐官辞任表明などでバイデン政権弱体化)などの動向がカギとなろう

米経済に関しては、23日に発表された全米企業エコノミスト協会(NABE)調査によると、米経済が既にリセッション入りしている3%、今後1年間でリセッションに陥る53%。合計56%で、10月調査の64%から減少した。また、ヘッジファンド・リサーチ(HFR)が20日発表したデータによると、22年の資産運用損失は約1250億ドル、資金流出は550億ドル(21年は150億ドルの流入)。年初ということもあって、潜在的な巻き返し意欲の高さが連想される。

 

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