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【銘柄インサイト】リオープン効果で航空需要増、規模拡大も後押し ~上海国際機場 ~


中国のリオープン(経済再開)に伴い航空需要の回復が進んでいる。旅客数の増加は空港運営会社にも恩恵大だ。浦東に加えて虹橋空港を傘下に入れた上海国際機場(600009)の商機拡大が見込まれる。

2022年末のゼロコロナ政策の実質解除と、その後の感染急拡大を一旦乗り切り、中国の交通需要が急速に回復している。春節連休中(1/21~27)の国内旅行者数は前年同期比23.1%増の3億800万人と好調。航空分野に限ると輸送客数は同79.8%増の900万人に上った。1月の航空旅客数は同34.8%増の3977万5000人で、19年の74.5%の水準まで戻ってきた。

他国・地域と同様、中国の航空業界は新型コロナ禍で冷え込んでいた。22年の旅客数は前年比43.1%減の2億4984万人。19年の5億8567万人の半分以下だ。ただ、23年はV字回復を遂げ、4億6000万人程度(19年の8割弱)になると見られている。

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浦東と虹橋ですみ分け

22年の空港別利用者数ランキングでは、成都(双流+天府)が3109万人で首位に立ったもよう。他の主要空港では、広州が2610万人、深センが2156万人、北京(首都国際)が1271万人などだ。上海は1417万人で意外と少なく見えるが、これは浦東国際空港のみのデータ。運営元である上海国際機場は22年7月に虹橋国際空港も傘下に置いており、この2空港を合算すると推計2885万人と見られる。

上海の2空港は、浦東が「国際線中心」、虹橋が「国内線中心」ですみ分けされている。東京に例えると「浦東=成田」「虹橋=羽田」のようなイメージだ。全体に占める利用者数はほぼ半々で、虹橋が浦東を若干上回ることも多い。直近の23年1月は浦東が284万人、虹橋が264万人で、概ね「52%vs.48%」だった。

現在、「上海エリア第3の空港」として、隣の江蘇省南通市で新空港の建設計画が進んでいる。今年11月に着工し、年間旅客数は延べ4000万人を想定。上海国際機場の親会社が運営する見通しで、上場企業への直接的恩恵は未知数だが、上海の航空ハブとしての重要性が増すことは間違いないだろう。

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国際線比率の高さが強み

上海国際機場は22年12月期で最大29億9000万元の最終損失を計上見通しで、3期連続の赤字決算となる。足を引っ張るのは人件費だ。新型コロナ禍にあっても大規模な人員削減に踏み切らず、従業員数は8389人(19年末)⇒8218人(20年)⇒8122人(21年)と推移。一方、売上高人件費率(人件費/営業総収入)は、19年の17.2%から20年は45.7%、21年は58.3%と急上昇。22年6月中間期は実に92.2%だった。「トップラインが伸びずにコストだけ増加」という状態だ。そのため、赤字脱却には離発着便の増加による航空関連収入の増加が必要になるが、前述のように航空需要の回復はほぼ確実視されており、23年は業績のV字回復が見込まれる。

同社の強みは国際線比率の高さだ。”コロナ前”の19年は39.5%で、広州の24.5%、北京の21.4%を大きく上回っていた(離発着回数ベース)。一般的に着陸料は国際線の方が国内線より高く、”稼ぐ力”が他社より強くなる。虹橋を加えたことで国際線比率は10ptほど低下しそうだが、それでも他社を上回って推移するだろう。3月末には航空各社が冬ダイヤから夏ダイヤへ切り替えるため、このタイミングでの国際航空便の増便・復便による便数増加が見込まれ、収益増への期待が高まりそうだ。

(上海駐在員事務所 奥山)

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