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今週の振り返りと来週の株式相場の見通しレポート(2023年2月11日)


Weekly 2月13日

日銀人事決まった。市場は大きな転機を迎えることになる。

10日にも予定されていた日銀新総裁。副総裁人事は「14日に国会提示」の方向となっていた。日経のフライング報道が影響したかどうかは分からないが、米国にお伺いを立てる岸田政権では、米国の返答が遅れていたのかもしれない。

6日朝方から、日経電子版が「黒田総裁後任、雨宮副総裁に打診」と報じ、シドニー市場でドル円は132円台半ば。日銀の金融緩和策延長との見方だが、壊れかけた相場の後押し材料となった面がある。日経が報じているように雨宮氏が有力とのことでYCC(イールドカーブコントロール政策)継続などの理由で円安に振れたとの見方が一般的だが、ドル売りの買い戻しタイミングと重なったと見るのが妥当だ。

雨宮氏の評は、「豹変する、カメレオン、指示に忠実」など。白川総裁にも黒田総裁にも中枢で仕えたことから「白にも黒にもなる」と揶揄される。8日、岸田首相が国会答弁で「リーマン後は内外での質の高い発信力と受信力が格段に重要になっている。十分配慮したい」と述べたことで、英会話力(海外経験が少ない)、理論力(博士号を持っていない)が、雨宮氏のネックになるとの見方も出ていたようだ。

ところが、10日の午後4時半ころYahooニュースで速報が入ってきた。共同通信電として、「植田和夫氏を日銀総裁に」というニュースだった。すぐに円相場を見ると、131円台からゆっくり130円台に入り、その後129円台後半まで円高となったが、このレベルでの滞在時間は短かった。この動きを見ても市場は今回の人事についてサプライズであり、植田氏に関するデータも少なかったのだろうか、消化難という感じがした。その後7時のNHKニュースでのインタビューで植田氏は「緩和継続」と発言、円相場も落ち着いた動きとなった。NHKによると、新副総裁の一人は国際派、新総裁が理論派であれば、上述した「英会話力」「理論力」を満たす人事ということになる。

さて、注目の週明け13日月曜日の株式市場は「誰が総裁になろうとも日銀は緩和修正に動く」という見方で安く始まるのではないだろうか。ちなみに、10日のシカゴ日経平均先物の終値は大証比65円安だった。

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米国の対中宥和策は先延ばし?

おそらく米国の日銀人事に関する返答は遅れ気味だったのだろう。その原因はスパイ気球問題で対中宥和策が一気にグラついている影響が考えられる。気球は通信傍受能力を装備し、5トンの積載能力(自重は1トン程度、核爆弾4発を搭載できる)など、解明が進んでおり、米議会はバイデン政権の対処遅れを糾弾する姿勢にある。ブリンケン国務長官の訪中予定を吹き飛ばし、バイデン政権が進めようとした対中宥和策の変更を余儀なくされるかどうかが焦点となっている。

バイデン政権は、元々親中派で政権後半に姿勢を切り替える計画だった、中ロ分断が必要、米経済および世界経済回復へ中国経済浮揚がカギ、急増する債務過多国救済に中国を巻き込む必要がある、などから、ニクソン訪中ほど劇的ではないが、何等かのサプライズ転換を計画しているとの見方がある。

一般教書演説でバイデン大統領は方針を変えない姿勢を示したが、米有力議員が「中国は右手がやっていることを左手が知らない可能性がある」と戸惑いを隠せない。街角に監視カメラを並べる感覚で、世界中に気球を泳がせるやり方は、習政策の異様さを示すと受け止められている。なお、航空機が届かない高度2万m圏は空白地帯と言われてきたが、米軍がF22のミサイルで撃墜したことで、米国に対処能力があることを示した。月を狙う中国の宇宙政策を含め、開発能力を削ぐためにハイテク技術規制は一段と強化されると考えられる。

1990年代以降の中国躍進は日本の失われた30年と背中合わせと見られている。米中の妥協か、決裂・分断化かは日本の方向感に大きく影響すると考えられる。

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英株場中最高値更新、日本統計は底堅さ評価も

6日発生したトルコの大地震で混乱が拡大している。イスタンブール取引所は朝方急落した後、現地時間午前11時に停止、15日まで休場すると発表した。終値比約16%安水準。

欧州株にはトルコ地震は今のところ影響していないようだ。とくに英FTSE100種指数は8日一時7934.30ポイントと場中過去最高値を更新した。牽引役はエネルギー関連株(欧州の石油・ガス株指数+1.66%)で、売り方の買い戻し主導と思われる。目に付いたのは欧州化学株指数株高。日本では業績下方修正が目立つセクターだが、欧州では原材料コスト低下期待が先行しているようだ。もっとも、ここまで売り込みセクターだったのかも知れないが。

SMBC日興の7日時点の3月期決算発表集計(803社、開示率55.7%)が報道された。気になる上方修正(純利益ベース)は106社、下方修正は137社。下方修正の方が額が大きいので、業績下振れイメージが強い。全体は9.5%増、金融除く14.2%増、内訳は製造業2.5%減、非製造業38.5%増。総合商社の上方修正インパクトが大きいと見られる。

8日内閣府発表の1月景気ウォッチャー調査(街角景気)は現状判断DIが48.5,前月比0.2ポイント低下。家計関連が0.6ポイント低下、企業関連が0.4ポイント上昇。インフレ高進による節約志向、記録的寒波などが影響したと見られる。先行き判断DIは+2.5ポイントの49.3。5月の「コロナ5類変更」期待や円安ピークアウト効果などが要因に挙げられている。分岐点50に届いていないが、底堅さを示す。

同じく8日発表の財務省の国際収支状況速報は、12月経常収支334億円の黒字、22年年間で11兆4432億円の黒字。前年から10兆円強黒字幅が縮小したが、なお11兆円の黒字額で、一方的に円安にはなり難い構図が確認された格好。12月単月では、貿易赤字1兆5803億円、第1次所得収支黒字1兆7952億円(第2次所得収支は1815億円の赤字)だった。所得収支の国内回流(配当増、設備投資増、賃金引上げなど)が引き続き注目要因となろう。

TOPIX2000ポイントになかなか届かない地合いで、押し上げ材料に力強さを欠く印象だ。ただ、底堅さも示し、海外との比較では、もう少し押し上げられても良いように思える。

FRBとECBの「別離」

7日付けロイターのコラムで「FRB(米連邦準備理事会)とECB(欧州中央銀行)の別離」と題したコラムが興味深かった。そこでこのコラムの要約を試みてみた。

ロイターのコラムによると、2つの中央銀行は、この半年間、足並みをそろえて利上げを進めてきたが、ここにきて別々の道を歩もうとしている。米経済がぐらついている一方、ユーロ圏経済が意外な底堅さを見せているためで、ECBは主要国中央銀行の中で「唯一のタカ」になる可能性が出てきたそうだ。ロイターのこのコラムでは、投資家はユーロと欧州株に投資することで、この別離から利益を得られるかもしれないと述べている。

 まず利上げに関して、ECBは昨年7月に2011年以来初めての利上げを決定。昨年3月から利上げに着手していたFRBと歩調を合わせたことになる。その後、会合ごとに両中銀は追加利上げを行い、タカ派的な声明を発表。欧米の株価は下落した。

しかし先々週、FRBとECB両行ともに利上げは実施したが、米国と欧州の経済環境は異なっていた。2月1日FRBが25bp(0.25%))の利上げを決めた後、パウエル議長は最近のインフレ率低下傾向を「歓迎」するとし、リセッション(景気後退)や高失業率を招くことなくインフレを退治できるとの道筋を示した。パウエル議長のトーンの変化は、米経済に息切れの兆しが出ているためだ。1月27日発表の12月の消費支出は前月比0.2%減、過去2年間で最大の落ち込みを示し、インフレ鈍化を示唆している。

一方のECBは翌2日に50bp(0.5%)の利上げを実施し、3月についても同幅の利上げを約束。その後も利上げを続ける方針を示している。

この2行の違いは、欧州経済が驚くほど底堅さを見せていることにある。ユーロ圏のGDPは昨年第4四半期に前期比0.1%増と予想外のプラス成長となり、昨年の成長率は3.5%に達した。天然ガス価格の下落、暖冬、政府による潤沢な家計支援に加え、主要な輸出市場である中国経済の再開により、今年リセッションに陥る確率が低下した。

対照的に米経済の見通しは暗い。UBSでは、米経済がマイナス成長に陥る確率を100%と予想しているが、ユーロ圏については同確率が10月時点の60%から26%に下がったとしている。

もちろんユーロ圏はECBの利上げの影響でリセッションに入る恐れも残っている。しかし市場は今のところ、こうした暗めのシナリオを無視し、利上げサイクルの終了に焦点を絞っている。1月は欧米ともに株価が上昇し、国債利回りが低下している。

欧米で経済と金融政策の方向性が分かれつつあることを考えれば、このような「何でも上昇」相場が続くとは考え難い。自然に考えれば、最も勝ち組になりそうなのは通貨ユーロだ。ECBが昨年7月に利上げを開始する前日、欧米の金利差は225bpだったが、今年11月までには150bpに縮小する可能性がある。金利差は為替レートを動かす主要な要因でもある。

また欧州株は米国株より割安でもある。ゴールドマン・サックスによると、STOXX欧州600指数は今後1年間の予想利益に基づくPER(株価収益率)が13倍(日経平均は10日終値で13.02倍台)と、米S&P500種総合指数の18倍を大幅に下回っている。その上、ゴールドマンによると欧州企業の売上高に占める海外比率は約60%と、米大企業の約40%よりも大きいため、世界経済見通しの改善によって恩恵を受けやすい。欧州株式市場の方が金融、鉱工業、エネルギー、消費者向けなど「バリュー株(割安株)」の比重が大きい点も有利だ。こうした企業は傾向として高配当である上、景気サイクルに敏感なため経済が好転する時に相場上昇を主導することが多い。

 以上がロイターのコラムの要約でもある。実際欧州株の優位は昨年11月ころから感じていた。そのころは特にドイツの経済指標の回復が目立ち、中国経済の復活予想とともに、温暖な天気予報も株価を下支えしていくと思っていた。

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