秋の気象情報で気になること。それは紅葉前線の情報ではないでしょうか?いつ頃、どこが見頃を迎えるか?春の桜とともに秋の紅葉は、昔から私たち日本人には季節を感じる重要なものです。さて、紅葉といえばイチョウは黄色いから分かるとして、もみじと楓って、何が違うのでしょう?今年の秋は、紅葉狩りのついでに紅葉のこともちょっと詳しくなっちゃいましょう。
~もみじと楓の基礎知識~
Q1.もみじと楓の名前の由来は?A1.もみじ:紅葉・黄葉するという意味の「もみつ」→「もみづ(ず)」→「もみぢ(じ)」と変化して、今に至ります。
楓:葉がカエルの手に似ているので「カエルデ」と呼ばれ、それがいつしか訛って「カエデ」になりました。
Q2.もみじと楓は違うの?
A2.もみじと楓を区別しているのは日本だけです。
もみじも楓も同じカエデ科カエデ属の植物です。外国ではもみじも楓も、どちらも”maple”と呼ばれています。
日本だけのもみじと楓の区別方法
・園芸・盆栽の世界での区別:葉の切れ込みの数・切れ込みの具合で以下のように区別されています
もみじ:イロハモミジ・オオモミジなどの葉が5つ以上に切れ込んでおり、掌状のもの
楓:上記以外のトウカエデ(切れ込みが3つのもの)
・学術上の区別:形質的な特徴により区別されている(葉の切れ込みの数・深さで区別はしていない)
もみじ:オオモミジ・イロハモミジ
楓:ハウチワカエデ・コハウチワカエデ・オオイタヤメイゲツ
楓ともみじはどれくらい種類があるの?
もみじ・楓が属するカエデ属植物は世界で約160種類以上。北半球に多く、中国をはじめとしたアジアに90種類。日本には37種類が生息していると言われています。いくつかの分類方法がありますが、形質的な特徴により16種類に分類されています。分類の単位を「節(section)」といいます。
1.parvflora節:「小さな花」という意。最も原始的な姿の節。日本のテツカエデ・ヒトツバカエデなどが属する。
2.palmata節:「てのひら状の」という意。イロハモミジ・オオモミジ・ハウチワカエデ・コハウチワカエデ・オオイタヤメイゲツなどが属する。
3.wardiana節:ビルマ北部・中国に生息。
4.macrantha節:「大きな花」という意。
5.glabra節:「無毛の」という意。幹に縞模様がある。
6.negundo節:北米・日本・中国に生息。日本のミツバカエデが属する。
7.indivisa節:「分裂しない」の意。属しているのは、日本のチドリノキのみ。
8.acer節:カエデ属の代表となる節。欧州に生息していることが多く、日本での生息はなし。
9.pentaphylla節:「5葉」の意。トウカエデ・クスノハカエデが属する
10.trifoliata節:「3枚の葉」の意。メグスリノキが属する。
11.lithocarpa節:日本のカジカエデの他、中国・ヒマラヤに生息する。
12.platanoidea節:「プラタナス様の」の意。北米以外の世界中に生息する。
13.pubescentia節:「軟毛の」という意。西アジア・中国西部に生息する。
14.ginnara節:日本のカラコギカエデが属する。東欧・近東・極東に生息する。
15.rubra節:「赤色の」という意。
16.hyptiocarpa節:熱帯地域に生息する常緑楓。
これさあれば完璧もみじと楓の種類の見分け方を教えます
日本で代表的なもみじ、イロハモミジ・オオモミジ・ヤマモミジの簡単な見分け方があります。紅葉狩りの際に参考にしてください。
葉の形
・イロハモミジ・オオモミジ:外周のギザギザが二重(重鋸葉)
・ヤマモミジ:外周のギザギザが一重(短鋸葉)
実の形・つき方
・イロハモミジ:翼状の実(翼果)が3つの中で最も小さい。実は竹とんぼのように水平に開いている。
・オオモミジ・ヤマモミジ:翼果がブーメラン状、もしくはU字状。実は葉の下にぶら下がる
※オオモミジの方が、翼果が大きくU字状も大きく曲がっているものが多い
色づいた葉
・イロハモミジ:赤
・オオモミジ・ヤマモミジ:樹によって、黄色・赤・源平(黄色・赤・緑)と様々
~紅葉について~
ここまでは、もみじと楓についてでしたが、紅葉全般についてお話していきます。
Q1.紅葉に種類ってあるの?
A1.狭義には、以下の3種類に分けられます
- 赤色に変わるもの:紅葉(こうよう)
- 黄色に変わるもの:黄葉(こうよう・おうよう)
- 褐色に変わるもの:渇葉(かつよう)
※上記3種類を厳密に区別するのは難しいので、葉が色づくことを「紅葉(こうよう)」と言われることが多いです
Q2.黄色の葉はイチョウ。赤はもみじ。他に紅葉する木はあるの?
A2.●赤に変わるもの(紅葉)
(例)イロハモミジ・ヤマツツジ・ヤマブドウ・ミズキ・・など
- 黄色に変わるもの(黄葉)
(例)イチョウ・シラカンバ・ポプラ・ノリウツギ・・など
- 褐色に変わるもの(褐葉)
(例)ブナ・カシワ・スギ・ケヤキ・スズカケノキ・・
など
Q3.何故、葉が落ちるの?
A3.そもそも葉が緑に見えるのは「クロロフィル(葉緑素)」が含まれるからです。
※クロロフィル(葉緑素):光エネルギーを吸収する役割をもつ化学物質
【葉の1年】
春~夏(日照時間が長い時期):クロロフィルが光を沢山吸収して、活発な光合成が行われる
↓
秋(日照時間が短い時期):光合成も活発には行われない為クロロフィル&光合成装置が分解(=葉の老化反応)
↓
葉に蓄積された栄養は幹へ(幹へまわった栄養は、翌春に再利用)
↓
栄養がなくなった葉は、食物ホルモンのエチレンの働きで、葉の付け根から切り離される(これにより、無駄な水分・エネルギーの消費を抑えて、冬を乗り切る)
Q4.何故、葉が赤や黄色になるの?
A4.●葉が赤に変わるもの(紅葉):「アントシアン」という色素による。
【アントシアンとは】
・春~夏の間は葉の中には存在しない
・秋の葉の老化反応のときに作られて、クロロフィルが分解されるときに葉を守る。
- 葉が黄色に変わるもの(黄葉):「カルテノイド」という色素による。
【カルテイドとは】
・春の若葉のころから葉の中に存在しているが目立たない
・秋になってクロロフィルが分解されると目立ってくる
まとめ
四季のある日本で桜と並んで「紅葉」は日本人は大好きです。数千年前から紅葉の季節に和歌を詠み、今なお紅葉や秋をモチーフにした歌(詩)は絶えません。混雑すると重々承知でいく紅葉狩りツアー。人気です。冬になる前の気持ちのよい季節。今年は少し知識をもって出かけたら、新しい発見があるかもしれません。